内容説明
江戸文化の華、浮世絵。今でこそ芸術的評価も高いが、当時は庶民の娯楽。絵師の給料は安く、副業として描くのは当たり前、春画で生活をしのいだ者も多い。それでも描きたい絵師たちは、売れるために、「風俗の最先端」を追い求めた。その影響力は大きく、幕府から処罰を受けた絵師もいる。本書では、ブランディングに成功した師宣、万物を描き尽くした超人・北斎、体臭も漂うような妖艶美人画を描いた英泉など、大胆に15人を選出。華やかな浮世絵の背後で繰り広げられた、絵師たちのスキャンダラスな人間ドラマを描く。
目次
菱川師宣―落款を入れるブランド浮世絵師
奥村政信―版元も兼業した知略家
西川祐信―都のはんなり美人の衝撃が江戸に
鈴木春信―カラー版画の革命児
北尾重政―挿絵大好きの異端児
勝川春章―大名パトロンを抱えた人気者
鳥居清長―役者絵界からの逆襲
喜多川歌麿―浮世絵美人画の代名詞
鳥文斎栄之―旗本絵師の酔狂が、歌麿美人画のライバルに!
東洲斎写楽―一瞬の煌きを残して去った、浮世絵界随一の謎
歌川豊国―役者絵・美人画・死角のない安定派
葛飾北斎―万物を描き尽くす画狂人
渓斎英泉―幕末退廃美の極み
歌川広重―風景版画の開拓と定着
歌川国芳―面白浮世絵なんでもござれ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
T M
8
人気浮世絵師15人の人物像と画業を切り口とした浮世絵案内書。一般的に浮世絵案内といえば作品解説が多いなか、浮世絵本来の下世話さを出すために文章やとりあげるエピソードに工夫されている。知らない絵師のことも知れて良かったし、どのような流れで画風の流行が移っていったかも感じることができる。2016/07/05
Berlin1888
3
「下世話」に語る浮世絵師列伝。主要浮世絵師十五人、面白エピソード満載で、決して芸術ではない江戸の浮世絵の実態を詳しく解説。たいへん興味深くて参考になるんですが、考証ミスなのか、ところどころ雑なのが残念。豊国が役者絵のシリーズを始めたのは寛政六年の春からだし。あと「クルトは写楽のことを(中略)世界の三大肖像画家とまで言い切っている」と言い切ってしまっているんですが、それ、日本人が勝手にいっているだけのインチキ宣伝コピーだし。クルトの本のどこを読んだら出てくるの?2015/07/20
S_Tomo🇺🇦🇯🇵
3
浮世絵の創成期から終焉までの代表的な浮世絵師15人ついての画風や当時の評価を記した本。単なる日本美術史の中での評価に留まらず、その絵師が活躍した当時の背景などにも触れ、浮世絵という物を江戸の庶民が如何に親しんだかを感じさせてくれる良書でした。2012/09/06
Orochidou
2
浮世絵を「下世話に」語ることをテーマにしているだけあって、絵師の背景や絵の返還、庶民からの見方や流行などがよく伝わってくる。 15人の代表的な浮世絵師を紹介しているけれどやはり歌川広重と葛飾北斎の激突あたりは文章に熱情がこもっている。やっぱ、すごいよ画狂老人。2013/04/07
ゆずこまめ
1
当時は浮世絵師って人気イラストレーターみたいな感じだったのかな。 美術館に飾られるようなものではなく、流行の最先端だった時代の空気を想像できる。2020/07/02