内容説明
どんなに深い絶望からも人は起ちあがらざるを得ない。すでに半世紀も前に、海も空も大地も農薬と核に汚染され、それでも草木は根づき私たちは生きてきた。しかし、と著者はここで問う。再生の目標はどこにあるのか。再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き「下山」を思い描くべきではないか、と。「下山」とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ、という鮮烈な世界観が展望なき現在に光を当てる。成長神話の呪縛を捨て、人間と国の新たな姿を示す画期的思想。
目次
いま下山の時代に(下るという大事なプロセス;下山しながら見えるもの ほか)
下山する人々(法然とフランチェスコ;平安末期に流行した今様 ほか)
いま死と病いを考える(この世で絶対的な真実;病人大国日本の憂鬱 ほか)
大震災のあとで(言葉もなく、おろおろと;下山途中の生き地獄 ほか)
ノスタルジーのすすめ(「時には昔の話を」のとき;古い記憶の再生装置 ほか)
著者等紹介
五木寛之[イツキヒロユキ]
1932年福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮にわたり47年引き揚げ。52年早稲田大学露文科入学。57年中退後、PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞を受賞。英文版『TARIKI』は二〇〇一年度「BOOK OF THE YEAR」(スピリチュアル部門)に選ばれた。02年に菊池寛賞、10年に刊行された『親鸞』で第六四回毎日出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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