内容説明
「見抜くのは才能ではなく、たったひとつ人間性である」と著者は言う。純粋だが、平泳ぎには不向きな身体の硬さをもつ北島康介。勤勉だが、精神的に弱く本番で力を発揮できない中村礼子。この二人の性格や性質を見抜き、異なるアプローチでオリンピック・メダリストへと導いた。成功への指導法はひとつではない。指導者が自分の経験へのこだわりと、選手への嫉妬と先入観を捨てれば、自ずとそれぞれに適した指導法が見えてくる。誰でも人は伸びる。すべて指導者次第なのだ。
目次
第1章 五輪の栄光
第2章 選手から指導者の道へ
第3章 見抜く力
第4章 人を育てる
第5章 水を究める
第6章 夢を叶える
著者等紹介
平井伯昌[ヒライノリマサ]
1963年、東京都生まれ。82年、早稲田大学社会科学部へ入学。在学中に選手からマネージャーへ転向。卒業後、東京スイミングセンターに入社。96年から北島康介選手の指導に当たる。2004年、アテネオリンピックで北島選手に金メダルをもたらし、「金メダリストを育てる」という自身の夢をも叶える。08年、北京オリンピックの水泳日本代表コーチに就任。北島選手にオリンピック二大会連続の二種目金メダルを、中村礼子選手に二大会連続の銅メダルをもたらす。現在、東京スイミングセンターコーチの他、日本水泳連盟・競泳委員。一二年のロンドンオリンピックに向け、競泳日本代表のヘッドコーチに就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばりぼー
25
水泳の北島康介選手を指導したことで有名な平井コーチの本です。「なぜできなかったかではなく、なぜできたかを考える」「オーバーコーチングに注意、ワンポイントで、しかもわかりやすい言葉で伝える」「選手を安心してスタート台に立たせるのがコーチの役割」「しっかりとした栄養、正しい練習、たっぷりの休養の三つが揃えば選手は伸びる」「成功をパターン化しない、同じ成功を繰り返さない」など、示唆に富む言葉が満載です。自分は未熟者なので、つい選手の欠点を指摘してしまい、後悔することもしばしば。何度読んでも忘れるんだよなぁ…。2013/10/06
たらお
19
短所を直すのではなく、長所を伸ばすことで短所を隠す。または、短所を直す取っ掛かりにするというのが、プロのコーチングのどの本にも書かれてあり、この育成法は堅い。「目は口ほどに物を言う」という通り、やる気を見るには相手の目を見るのも鉄則。北島が更に上を目指すために、今までの練習方法を捨てて、ウエイトトレーニングで筋力増強してパワーをつけてから、泳ぐ技術をつけていくなど、あえてアンバランスに鍛えてから、高いレベルでそれに見合う技術を身に付けさせていくといった練習の意識の高さが成長を促すことを知る。2023/11/25
柔
19
効率的でクールな印象だったが、きつい練習で身体を極める。科学と根性をうまく融合させていて勉強になった。成功をパターン化するな!どうして成功したのかを頭で整理してその成功を繰り返そうとしない。後追いすると指導者の成長がなくなる。やる気は目に表れる。選手の目力に注目する。言葉は競技も上達させる。自分の泳ぎを自分で説明できる選手は伸びる。何が悪かったか?は反省する。なぜ成功したのか?を振り返る事が大切なのだとも。選手に合った目標を立て(北島は金、中村は銅)それは絶対叶える!勝てるコーチングは大変勉強になった。2021/12/01
nao1
19
北島康介を金メダルに導いた平井コーチ。夢があるいい本。「なんで良かったのか」を反省する、という考え方が新鮮だった。それが悪いときの「リカバリー能力」になる。しかし同じ成功パターンは繰り返さない。厳しい世界だ。p.166に『坂の上の雲』の引用。子規が秋山真之に、外国の軍艦や大砲を使っても運用を日本人がやって勝てばそれは日本人の勝利だと言ったことが大変に印象的だったそうだ。水泳は単調なスポーツで外国から必死で学ばなければ限界がくるが、いくら外国式のやり方でやろうと泳ぐのが日本人だったら日本の水泳だということ。2016/05/01
ルート
15
北島康介さん、中村礼子さん、上田春佳さんら競泳オリンピック選手を育てたコーチの本。選手のタイプ毎に関わり方が変わるのはもちろんのことだ。信頼関係作りが必要だな。昨今はスポーツの世界の裏側の暴露が多い。正当な権利を主張するのは必要なことだが、もう少し外野が引いていてもいいのかなと個人的には思う。コーチもオーバーコーチングに気を付けているとのこと。見ている側も、同じかもしれない。2018/05/24