内容説明
気がつくと激しく舌を絡めあっていた。唇を離す度、身体の芯を甘美な刺激が突き抜け、再び求めあう。部長職にある神崎太一が、隣部署のＯＬ美奈と二人で会った二度目の夜のことだった。「ああっ、私どうしたらいいんですか」「君は俺に押し流されてくれればいい」。妻子ある中年男と恋人がいる若い女の淫猥な純愛を描く、禁断の傑作官能小説。
著者等紹介
松崎詩織［マツザキシオリ］
２００６年、妖しく光る官能描写を絶賛され、「フラジャイル」で幻冬舎アウトロー大賞特別賞を受賞。同年６月に、受賞作を収録した官能小説集『教育実習生』でデビュー。以後、スポーツ新聞連載など精力的に作品を発表している（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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よしよしニャンコ
14
救われた。生きる希望が湧いてきた気がする。冒頭からラストシーンまで徹底的にリアリティを排除した物語展開と人物描写。そしてただ繰り広げられる濃密な性行為！ 憂鬱な通勤電車の中で読んだが、お陰様で、見事に私の脳みそは異世界の空間に飛ばされた。／ところで、私は不倫願望は持ち合わせていないが、不倫する人々がその時間を一体どうやって捻出しているのかは気になっていた。この本にその答えが書いてあった。すなわち、徹底的に家族を顧みないことだ。つくづく私にとってはリアリティから程遠い世界の話だな。2021/02/03
山のトンネル
6
アイデア：攻めていた神崎が実はMで、美奈が実はSというストーリーが読みたいかも。Sっぽく振る舞う神崎のMさが見破られて、美奈に攻められるという会。2022/06/04
山のトンネル
6
周りの目に囚われないからこそ、タクシーの後部座席、電話ボックスの中、公園という数々の公共空間で肉欲に溺れる二人が描かれる(→マンネリ解消のアイデアとして面白い)。科学的には人間の記憶が場所に紐づけされると残りやすいことが分かっている。だからこそ、神崎にとって美奈との逢瀬は、人生の最後でも思い出すほど鮮烈な記憶として残っているのではないだろうか。余談としては、神崎が女性にかける言葉は男性からすると学ぶ点が多いと感じた。ブックカバーをもらったシーンの受け答えなどは本当に参考になる。前から欲しいと思っていたね。2022/06/04
山のトンネル
5
性描写に関してはアブノーマルな場所で初恋同士がやりそうなことが多い。美奈は見た目が綺麗で、頑張り屋さんで、プライドが高くて、簡単には素直になれないけど純粋な女性。神崎は相手への配慮をしつつ(周りには配慮していない)、正直者で言葉を巧みに操り、相手の心に直接攻めるやり手。神崎の行為は嗜虐的ではないと思う。美奈が苦痛に歪む様などは描かれない。美奈が受けで、神崎が攻めという関係で終始描かれる。肉欲に溺れるより、愛欲を通して心を通わせる二人。二人とも狂った性癖の持ち主という印象は受けなかった。2022/06/04
山のトンネル
3
一言感想：一夏のアバンチュールが人生の渇きを潤してくれることもある。感想：「一緒に飲みませんか？」の一言から始まる美奈と神崎の関係。しかし、美奈には彼氏が、神崎には妻子がいる。偶然の出会いに、運命に似た初恋の気持ちを抱く神崎。この物語の特徴は徹底的に二人の世界が中心に綴られている点だ。相手への好意に意識を集中することで、結果的に周りの目にとらわれない恋愛へと発展する。まさに恋は盲目という言葉がふさわしい関係性。実際、恋は目を覆い隠す類のものではなく、その人しか見えなくさせてしまうものではないだろうか。2022/06/04
