内容説明
男は長年忘れていた記憶を繰り返し夢で見ていた。それは五十数年前、終戦直後の朝鮮長屋で過ごした少年時代。殺害された友人が警察の裏庭で乱暴に解剖され内臓を引きずりだされた姿だった。次第に現実と夢の境界が曖昧になった男は、殺戮と快楽が同じと思い始めていく…。表題作ほか六篇、醒めない悪夢の果てにある暗黒世界を描く傑作短篇集。
著者等紹介
梁石日[ヤンソギル]
1936年大阪府生まれ。『血と骨』で第一一回山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
冨井 丸
1
★3.0 一言で言えば、面白かった。1話目が★4.5で2話目が★4.0でその他★2.5の印象。3話目以降は尻すぼみというか風呂敷広げっぱなしというか投げっぱなしジャーマンというかそんな印象。本全体を通しても前2話が大好物だっただけに同じような印象。作者の経験が基になっていると思われ、私小説的で良かった。貧困、差別、混沌、業、などたくさんのテーマが入っていた。2023/03/22
sakai
0
今こうやって平和な中で生きていると、人の道を外すくらいなら死んだ方がマシと思えるけど、実際どんなことしてでも生き延びてやるって思ったら人の道なんてものは見えなくなるのかもしれない。そんなことを思わせる内容だった。2014/08/22
コールドパワー
0
短編集/1話と2話が繋がっているのに後で気付いて、ゾワゾワした。暗くてやりきれない。でも引き込まれて一気に読んだ。その後は、タクシー運転手が主人公の話が続く。2022/12/27
つちのこ
0
文庫版新刊で購入。6篇収録の短編集。2006.10.20読了2006/10/20
Stair512754
0
短編集 以前、この人の作品『血と骨』が映画化された頃だろうか? 興味を持って読んだ作品が途中までおもしろかったのだが 半ばから展開がグダグダになっていた (今、調べたら『裏と表』という作品だったようだ) それ以来「よく名前は聞くし世間的に評価は高い作家だが、 読む価値は無し」と勝手に決め付けていたのだが・・・ 今回読んだこの作品 恐らく誰かが貸してくれたのだろう、 店に置きっぱなしになっていた文庫本 たまたま暇つぶしに読んでみて驚いた 2008/09/23