内容説明
生まれついて父はいない。そして幼くして、母までも事故で亡くしたひな菊を支えたのは、親友のダリアだ。ダリアがブラジルに旅立ち十数年、二十五歳のひな菊は、ダリアとの「林の中」の鮮やかな思い出を胸に今を生きる―。哀しくも温かな人生をひな菊は語る。奈良美智とのコラボレーションで生まれた夢よりもせつない名作、ついに文庫化。
著者等紹介
吉本ばなな[ヨシモトバナナ]
1964年東京都生まれ。「キッチン」で海燕新人賞を受け、デビュー。「TUGUMI‐つぐみ」で山本周五郎賞、「不倫と南米」でドゥマゴ文学賞を受賞。著書は世界各国で訳書となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
190
奈良美智とのコラボレーション。ひな菊の一人称で語られる、淋しい夢を見たかのような物語。主人公のひな菊と、他の登場人物との関係性がなんだか希薄だ。かといって、ひな菊が孤独だというわけでもない。お互いの間に葛藤や目立った軋轢もない。それでも、ひな菊は一人暮らしを選ぶ。日常はありふれていつつも、輝きがないわけではない。しかし、「たった一瞬前のことだというのに、もう時間は戻らない」。環境こそ違え、同じような人生を送って来たはずのダリアは亡くなり、ひな菊は彼女の生を生きている。はかなさの中に暖かさのある物語だった。2012/08/17
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
146
哀しみをたっぷり受け止めて生きる25歳の女性・ひな菊。生まれつき父はいない。幼い頃、母を事故で亡くした。支えになってくれた親友ダリアはブラジルに旅立ち、今は夢の中で繋がっている。夢はお好み焼き屋……。15枚の絵を描き下ろした奈良美智氏とのコラボで生まれた名作。吉本さんは奈良氏の絵をイメージして物語を創り、奈良氏は物語を読み込んで絵を描いたという。二つの魂が響き合った夢のような世界。人生は切ない。平和な風景には脆さが潜み、いま『普通に』ここにいる事は奇跡なのかもしれない。だからこそ大切にしなければと思った。2016/04/07
あつひめ
74
死に対する思い。ダリアとひな菊の心の距離と関係。それが大袈裟ではなく飾りもせず…でもその感覚が伝わってくる…読んでいてスーッと溶けてくるような感じで読み進めた。人生が終わってしまう死というものが悲しいだけではなく、そしてそこからまた何かが生まれると思えたら怖くなくなるだろうか。生きていたことは事実。体を失っても繋がっていられる関係。それこそ、相手を愛おしむ気持ちがあればこそなのかもなぁ。2015/12/14
はらぺこ
47
笛の音が耳に届くと猛ダッシュで走ってくるダリアを想像すると可愛くてたまらんかった。 内容的には、ダリアの事を語ってる部分以外は字を追ってるだけやった。なので、すんなり理解出来ない部分が何度か有り、その度に読み返す羽目になった。多分、自分がオッサンやから共感出来ずに読み進めたからやと思う。ひな菊と同性で同世代なら共感出来たのかも知れない。 2011/03/06
hitomi.s
29
再読。自分が、居ていいと思える場所や人。、について立ち止まれたお話。好きだけでもダメ。好かれているだけでもダメ。ばななさんの文と奈良さんの絵で、そんなじぶんのこれまでのことを考えた。2018/08/12