内容説明
1998年4月27日。それは、亡き祖母にその日に死ぬと予言された日だった。訪れたアルゼンチンで、夫への想いと生を見つめ、残された時を過ごす「最後の日」。生々しく壮絶な南米の自然に、突き動かされる恋を描く「窓の外」など、南米を旅しダイナミックに進化した、ばななワールドの鮮烈小説集。第10回ドゥマゴ文学賞受賞作品。
著者等紹介
吉本ばなな[ヨシモトバナナ]
1964年東京都生まれ。「キッチン」で海燕新人賞を受賞し、デビュー。「TUGUMI‐つぐみ」で山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
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ミカママ
294
手放す前に再読。ばななさん、ここでも石原さんと旅行なさってるのね。この辺までは出版業界まだ潤ってたんだろうか。未踏の地・南米、行ってみたいのはやまやまだが、ちと遠い。それまでは南米ワインで偲んでおくか。写真や挿絵も素晴らしかった。2018/03/11
ヴェネツィア
56
不倫を軸とした7つの物語からなる短編集。小説は本格的で、作者御本人も満足な様子。評価も高そうだ。ばなな作品の良質の部分がよく出ていると思う。また、今回も原マスミの絵がいい。この人は自分の様式をちゃんと持ちながら、バリではちょっとバリアート風のスタイルを、そしてここでは中南米風の味わいを出している。ただ、アルゼンチン絵画というよりはメキシコ風のような気がするのだが。2012/05/18
なる
53
南米ブエノスアイレスを舞台に、不倫をテーマにした短編集。南米の濃密な湿度が著者特有の文章と混ざり合って独特の魅力を放っている。物語はそれぞれが独立してはいるものの、ゆるく繋がっているようにも。あくまで主人公からの視点で物語はつづられて行くのに、一歩離れた俯瞰から感情をとらえていて、不倫という重いテーマを扱っているにもかかわらず読み心地が良い。原マスミによる印象的なイラストが作品の要所にちりばめられ、山口昌弘による装丁と写真もより彩りを添えている。七編のうち『最後の日』と『プラタナス』が特に好み。2021/08/25
みう
37
【世界の旅シリーズ第③弾】バリ島、エジプトに続き、今回は日本の裏側〈アルゼンチン〉を舞台にした短編集。小説だけど、ばななさんの旅日記のよう。このシリーズは旅行気分を味わえるから好き。どれもよかったけど『プラタナス』の郷愁をさそう雰囲気が特に好みでした。ばななさんの描写力に加え、写真や絵のおかげで、実際に南米に行った気分になれました。仕事を兼ねているとはいえ、あごあしつきでこんな旅ができるなんて羨ましい!『ハチハニー』ではアルゼンチンの悲しい歴史を初めて知りました。2007/05/20
白雪ちょこ
35
当時のアルゼンチンの、美しい写真と共に作者の美しい文章が綴られている。 それぞれの女性達による、不倫にまつわる話。 アルゼンチンの美しい街並みや、人、食べ物、景色なども描かれていた。 大人の絡みつくような、暗い恋愛、そして過去。 不倫と言っても色々な形があり、成り行き、自分の親、友達が、など。 女性達の、苦労しつつもどこかその日常を楽しみ、キラキラと輝くように生きている様が 素晴らしい。 作者の書く物語は、暗い中にも美しさがあり、どこか温かみがあるところがとても好きだ。2023/05/27