出版社内容情報
女子とて、芸を極めてならんことはない。出もどりの女流書家の凛とした筆が、硯と墨が溶け合うように、弟子たちの心をほぐしていく。師弟の絆が胸に響く、「書道」歴史小説!老中・水野忠邦が綱紀粛正に乗り出した江戸時代後期。突然、理由もなく嫁ぎ先から離縁された女流書家の岡島雪江は、心機一転、筆法指南所(書道教室)を始めるが・・・江戸時代に生きる「書家」とその師弟愛を描いた、人気時代作家の新境地!
内容説明
墨を磨り、紙に向かい、筆を揮う。出戻りの女流書家の凛とした筆が、墨と水が溶け合うように、弟子たちの心をほぐしていく。江戸時代の「書家」の日常を描いた、人気時代作家の新境地!
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞を受賞。2008年、「一朝の夢」で松本清張賞を受賞し、単行本デビュー。2015年『ヨイ豊』で第一五四回直木賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナイスネイチャ
160
図書館本。夫と離縁し女子達に書道を教える指南所を営む主人公。男尊女卑の時代に力強く生きていく女性を描いてました。ただ最後が尻つぼみ気味でちょっと残念。2017/11/19
いつでも母さん
124
離縁された経緯に納得も出来ず、迎えにきた元夫に「まちくたびれた」と戻る女流書家・雪江が、実家で書道教室を始めた日々を綴る連作短編5話。梶さんの作品は概ね優しい。手習いに通う娘たちの心根が微笑ましくもある。雪江の母と家督を継いでいる弟とのやりとりも面白い。『書家』から連想するのは、墨の良い香りの中で落ち着いたイメージだが、どっこい出戻りの日々は霞を食べて生きられはしない。その、あれやこれやに、ほっこりしたり、はっとしたりで一気に読了したが、タイトルほど墨の香りがしないのが残念ではあった。2017/10/19
のり
117
江戸後期、筆法指南所(書道教室)を開いた雪江。弟子は武家の娘達。中には、どの時代にでもいる小生意気な娘も。親の地位が尊大にさせるのか…雪江の指導も試行錯誤。時代背景も不穏漂う。雪江の師匠・菱湖は、江戸の高名な三大書家の一人に数えられる偉大な人物。剛胆かつ繊細。常に雪江に心砕いてくれる。師弟の関係が美しい。書には、その時の心根が現れるとは名言。「仁・義・礼・智・信」儒教の五徳の教えも身にしみる。2018/05/18
のぶ
96
全編を通して、とても静謐な空気が漂っているような作品だった。主人公、雪江は突然離縁を言い渡され、実家に戻ってくる。そこで書道塾を経営し生計を立てるが、そこでのいろんな人たちとのふれあいが描かれている。何気ない日常を綴った5つの話の連作だが、どの話も地味なものが多い。ひたむきに生きる雪江の姿に書道の素晴らしさが浮き出ているような一冊。ストイックに生きる姿に「墨の香」というタイトルはとてもよく合っていると感じた。2017/11/27
いたろう
83
天保年間、夫に離縁され、実家に戻って、武家や町家の娘たちを集めた書道教室、筆法指南所を始めた雪江。子供のときより、江戸の三筆の一人と讃えられる巻菱湖(今でも将棋の駒字に菱湖書として残る実在の書家)に師事し、結婚して一時遠ざかっていたが、思いがけず、書家として独り立ちすることに。「自ら立つことはどのような道でも難しかろう。まして、女の身であれば、そこらのたいした腕もない男どもに、妬まれることもあろうが、くじけるなよ」という師匠の温かい言葉が雪江の心に染みる。題名の墨の香のように、清々しい読後感の時代小説。2018/02/03