内容説明
この男、稀代の愚将か名将か。信長を追い詰めた男・斎藤龍興は、如何に戦い生きたのか?波乱に満ちたその生涯を描く、戦国史小説。
著者等紹介
天野純希[アマノスミキ]
1979年愛知県生まれ。愛知大学文学部史学科卒業。2007年「桃山ビート・トライブ」で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
156
美濃の蝮の異名で知られる斎藤道三。その孫である斎藤龍興を主人公に描く。読了して思う事は歴史の多面性。また、勝者が歴史を作るということ。戦国時代において、斎藤龍興は暗愚と評価される。信長に破れ領国を失った。斎藤龍興が父である義龍の急死により家督を継いだのは14歳。ここから7年間、龍興は美濃を維持する。龍興の年齢と経験を勘案すれば、一概に暗愚とも言えないと思う。周りの家臣の助けもあったと思うが、隣国に織田と武田という勢力があるなか、弱年でよく美濃を維持したとも言える。読みやすい文体。歴史の多面性を感じた作品。2017/09/25
巨峰
95
斉藤竜興。斉藤道三の孫で義龍の子。父義龍が祖父・叔父を皆殺しにするという複雑な家庭環境で育ち、父義龍の急死後幼くして美濃の国主となるが家臣団をまとめきれず織田信長に美濃国を奪われる。そこまでは史上で有名だけど、その後も竜興は織田家と戦い続けて最後は越前朝倉家に殉ずる形で闘死したのはあまり知られていないと思う。その知られていない先の話をうまく小説化したと思った。竜興を慕う斉藤家旧臣たちや野心を隠しきれない竹中半兵衛などの描き方が出色。天野さんの小説は本当に外れがない。2018/12/23
さつき
72
斎藤龍興というと竹中半兵衛に稲葉山城を奪取された件くらいしか知らず、あまり興味を持った事もありませんでした。その時まだ10代だったとは!知らないことばかりで半兵衛(この作品では重治と呼ばれる)と龍興の因縁を中心に描いたこの作品はとても新鮮でした。2022/08/13
maito/まいと
28
タイトルと登場人物だけ見ると「信長嫌い」に入れそうな作品に見えるが読んでみると、むしろ入れてはいけない作品だと感じた1冊。最近の天野さんの著書では珍しく?創作要素が非常に多く、かつハッピーエンドで終わるとは!史実では美濃を追われても信長に抵抗を続ける愚将としてのイメージが強い斎藤龍興を、よくぞここまで見事に描ききるとは、感服です。自分の中では「破天の剣」「覇道の鎗」に匹敵する名作だと太鼓判!竹中半兵衛をもう一人の主人公に据えるストーリーテラーにも脱帽です。2017/11/14
ハッチ
28
★★★★★斎藤道三の孫、龍興の歴史小説。龍興と言えば、わずか数十名の兵と竹中半兵衛に城を奪われた愚鈍な国主、織田信長に稲葉山城を攻め落とされ、信長の時代から岐阜城と名前が変わった事、それぐらいしか知らない。だか、ここで出てくる龍興は名将とまではいかないけれども、憎めず、茶目っ気があり、それなりに活躍する。半兵衛と龍興の目線で語られるが歴史小説として面白かった。龍興にスポットを当てた小説は他にはないので、読んでみるもの良いと思います。2017/03/10