内容説明
時は江戸時代中期。大坂の生國魂神社の境内には、芝居小屋や見世物小屋が軒を連ね、多種多様な芸能が行われていた。笑話の道を志した米沢彦八は、役者の身振りや声色を真似る「仕方物真似」、滑稽話の「軽口噺」などが評判となり、天下一の笑話の名人と呼ばれ、笑いを大衆のものとした。彦八は何故、笑いを志し、極めようとしたのか?そこには幼き頃から心に秘めた、ある少女への思いがあった―。
著者等紹介
木下昌輝[キノシタマサキ]
1974年大阪府生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒業。ハウスメーカーに約5年勤務後、フリーライターとして関西を中心に活動。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞する。14年『宇喜多の捨て嫁』で単行本デビュー。同作が第152回直木賞候補となり、15年に第2回高校生直木賞、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞を受賞。二作目『人魚ノ肉』は第6回山田風太郎賞の候補作となる。16年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナイスネイチャ
216
過去2作と全然違う作品で、上方落語の祖米沢彦八が万人を笑顔にするという信念で(恋心抱いてた幼なじみを笑顔にするという目的もありましたが)苦悩しながら道を切り開いていく。単純に面白かったです。2016/04/27
いつでも母さん
142
戦争で世界は一つにはならないが、『笑い』は世界を一つにするね。戦国時代、偉い人のための『噺』ではなく民衆の為の物なのだ。米沢彦八が幼馴染の里乃を笑かす為に修業に出る・・波乱万丈の生涯だったなぁと思うと切なさが勝る私では在るのだが、それは彦八の望みではないはず。自分の最期でさえ『笑い』にする彦八に里乃の笑顔が全てを包む。それだけでいいのだ、それが目指す事だったのだから。彦八がいて今の『笑い』があるのだろうー『笑い』は深いなぁ。木下作家。今回も面白く読了させてもらった。2016/05/06
修一朗
114
血の匂いプンプンだった全二作とは大きく趣向を変えて,芸の道に邁進した上方落語の始祖米沢彦八の生涯,面白かった~ 例によって史実はきっちりフィクションはドラマチック。同じ時代に笑いを競った鹿野武左衛門や露の五郎兵衛のように,こうやって歴史上の人物を知っていけるのは楽しい。これからも歴史上の人物を独特の切り口で書いていってくださいね。ちなみに私も気づきました。「もう一つ座敷を見たいって何やねん」「どっかで聞いたことのある評やなぁ」,直木賞の講評じゃん。ホントに惜しかったねぇ…2016/06/12
なゆ
109
これはどうやら、お笑いという文化のはじまりの話か…と思いながら読んでましたが、米沢彦八という人は本当に上方落語の祖、落語家の元租のひとりと言われている方だったのですね!安楽庵策伝和尚からはじまり、二代目安楽庵策伝、そして彦八へと繋がっていく笑話に懸ける想い。ただただ誰よりも人を笑わせたい、それだけなのに理不尽な目にも遭い、挫折しまくり、途中まではどうなることかと。いつも強気な口調の彦八だが、どこか寂しげな印象も。最後まで、ただただ一途な彦八の生き様がじわじわと沁みる読後感です。2016/05/22
W-G
98
本屋で見かけて興味を持って購入。面白すぎてあっという間に読了。里乃の存在が、ただでさえ面白い成り上がり一代記を、さらに盛り上げる。名古屋の咄小屋の舞台で里乃を大笑いさせるラストも見たかった。2016/04/24