内容説明
衆より個の利益を、未来より現在を大切にする今の日本。150年で起きたこの国の「変容」を、知の巨人が深い洞察力と明快な論理で解き明かす。驚きと発見に満ちた、白眉の日本人論。
目次
第1章 なぜ歴史を学ぶのか
第2章 父の時代・祖父の時代
第3章 中国大陸の近代史
第4章 明治維新が目指した未来とは
第5章 参勤交代から覗く「江戸時代のかたち」
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を、それぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
61
浅田次郎の最近の著作は期待が高いだけに今一感がありましたが、講演録の本作は、著者の近代史感・歴史認識・愛国心がわかりやすくまとめられていて興味深く読みました。科挙の効能で清以前の政治家が全員詩人だったなんて初めて知りました。ただ内容(決して日本の今後の運命について語っていない)とタイトルにギャップがある気がします。小中高と3度日本史を学ぶ機会がありますが、明治維新あたりでほとんどフェイドアウトするので、近代史と科目を独立させて明治維新から現代までをきっちり教育させた方が良いと思います。当然必修科目として。2015/02/14
ころりんぱ
54
浅田さんの本好きです。語り口が柔らかで、声が聞こえてきそうな文章と思ったら、講演録を書き起こしてまとめたものだそうで。出てくる本たちも読んだことがあるのですんなり。文筆家らしく政治のつっこんだ話までは野暮ということで、江戸時代の良さ、幕末明治大正昭和と、中国の歴史に触れて、歴史を学んでくださいな、という内容でした。タイトルは合ってないかも。私は「蒼穹の昴」で科挙制度の中身を知り、「終わらざる夏」で徴兵制度や赤紙を届ける側の辛さ、8月15日以降の占守島の戦いを知りました。小説で教えてもらったこと沢山。2015/09/29
壱萬弐仟縁
38
講演録で脱線している箇所がある。誰の責任なのか、どこに問題があったのかと振り返ることも実は重要です(13頁)。歴史は人の共通の記憶、事実の捉え方(28頁)。京都駅が街の端にあるのも、反対運動が強かったから(39頁)。勉強しろと言われたことは一度もありません(55頁)。俺もだよ。日本語の縦書きを大事にしたい(137頁)。関所破りは重罪、磔刑(たっけい188頁)。著者は妻籠宿、奈良井宿は世界遺産ものと高く評価している(205頁)。地元からすると光栄。2015/12/19
酔拳2
37
最近通勤しなくなって、本も読まなくなった。ここは大好きな浅田先生の本で、読書欲を復活させよう、てことで読んだ本書。数々の浅田先生の作品の下地がわかりやすく書かれている。大正は軍縮の時代だったとか、辮髪やチャイナドレスは漢民族の文化ではないとか、脱線する話も面白く、いろいろ勉強になります。やはり終戦後に攻め込んできたソ連は腹立たしい。にしても、俺はなぜこんなに近現代史を知らないのかと思っていたら、そうか、学校で習ってないからだ。当時の教育のせいにしてしまおう。もう今更自分で勉強するのは面倒くさい。。。2020/08/15
もくもく
34
浅田次郎の講演録です。自著でテーマにした、幕末、清朝末期、日清・日露戦争、そして太平洋戦争などの歴史を振り返りながら「日本の運命」について思いを巡らせています。国家にとっての戦争が(勝てば)多額の賠償金や利権を生んだ時代から、何も生まない外交の敗北になり果てた現代まで、一国だけで何かが変わったのではなく、世界情勢という「空気」の変化をきちんと知っておくことが必要なんでしょうね。『人間は時代とともに進歩ではなく変容し、あるいは退行しているのだという謙虚な認識をもたなければ歴史を語れない』というのは納得です。2015/08/03