内容説明
運命を切り拓く勇気がある者の胸に高らかに鳴り響け、“歓びの歌”。いじめ、差別、テロ、裏切り―。この残酷な世界で、なぜ人類は滅びないのか?生き抜くための“道標”、世界文学の誕生。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960年愛媛県生まれ。86年「白の家族」で第13回野性時代新人文学賞、93年「孤独の歌声」で第6回日本推理サスペンス大賞優秀作、96年「家族狩り」で第9回山本周五郎賞を受賞。2000年「永遠の仔」で第53回日本推理作家協会賞、09年「悼む人」で第140回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫 綺
97
クライマックスになると黒々とした雲の隙間から眩い光の筋が、サアーッと射し込み、まさに「天孫降臨」を見る思いだった。愛を求め、愛を愛し、愛をはぐくむ者になる…。文中の言葉が胸に突き刺さる。2013/02/28
文庫フリーク@灯れ松明の火
95
「共に生きよう、きょうだい達よ。共に歩もう、自分たちの信じる道を・・真の悪に勝利した英雄の如く、生きている喜びを胸に抱いて。そして抱き合おう、我がきょうだい達・・この世界に生きる全ての人々に、祝福のくちづけを贈ろう」天童荒太氏は巨岩である。庭石となるような美石ではない。ただ圧倒的な存在感と重量感の有る巨岩。伏線と回収?家族愛?性善説?ミステリー?感想を表そうとする言葉全てが、この巨岩の前では、的外れで安っぽく感じてしまう。美辞麗句の称賛も、逆に酷い批判も、巨岩が涼風や豪雨を受けるかの如く→続く2012/12/24
ケイ
87
終盤に作者の巡らした伏線に気付く。ギスギスした兄弟関係はそれなりの理由を秘めていたからで、改めて家族全員の思いやりに胸が熱くなる。章ごとに視点が変わるのは、読みにくいながらも面白かったが、誠とパラレルワールド的な存在のリートの話は必要だったのだろうか。最後は、第九が頭の中で鳴り響いていた。斉木の人となりが結局わからないままだ。味方だったのか、利用者だったのか…。2014/05/19
藤枝梅安
87
下巻の初めのうちは上巻と同じような子供たちや若者の苦難の毎日を描く。香の周囲の外国籍あるいは難民の子供たちの無邪気な行動は、我々日本人の大半が持つ「民族意識」とは違う価値観を教えてくれる。日本の「マコト」と紛争下の国に暮らす「リート」の物語が交錯してわかりにくい印象だが、マコトとリートが繋がっているように日本と世界が繋がっていることを読者に訴えている。物語の終わりに向かって事態は急展開を見せるが、これとて、「終わり」ではなく「始まり」に過ぎない。子供たちの苦難はまだまだ続くし、世界中の紛争は終わらない。2013/02/24
けい
66
上巻と比べると少しずつ歓喜の方向へ向かっていると感じ、読むスピードが上がりました。続けて読まず一冊挟んだのも正解だったかな。物語全体に漠然と潜んでいた謎はそういうことだったか・・・(父)。ラストは頭の中で白黒だった情景に色が鮮やかに戻り、第九のメロディーが鳴り響く状態に。香の「むれ」という表現、誠の人間が滅びない理由は印象に残った。でも読むの本当に疲れたー。2013/05/13