番犬は庭を守る

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  • サイズ B6判/ページ数 230p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784344021235
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

原子力発電所が爆発し、臨界事故が続発するようになった世界では、放射能汚染による精子の減少と劣悪化が深刻な問題となっていた。優良精子保有者である「種馬」の精子は民間の精子バンクが高額で買い上げ、その一家には一生遊んで暮らせる大金が転がり込んで来る。一方で、第二次性徴期を迎えても生殖器が大きくならず、セックスのできない不幸な子供たちは「小便小僧」と呼ばれていた。高校を卒業し、警備保障会社に就職をした小便小僧のウマソーは、市長の娘に恋をした罰として、使用済みの核燃料や放射性廃棄物で溢れる、廃炉になった原発を警備することになる。やがてウマソーの性器は徐々に失われ…。人々が原子力を選んだ結果、生まれてしまった世界。だが、それでも紡がなければならない未来がある―。全編を通して岩井美学に貫かれた、豊饒なエンターテインメント。10年ぶり、書き下ろし長編小説。

著者等紹介

岩井俊二[イワイシュンジ]
1963年宮城県生まれ。95年「Love Letter」で映画監督としてのキャリアをスタート後、「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」など数々の作品を発表。近年は活動を日本国外にも広げ、2010年、「ヴァンパイア」をカナダ・バンクーバーにて撮影。メディアの枠を超え、多彩に活躍するマルチクリエイター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あも

40
灰色の町に灰色の風が吹き、色褪せた草原の葉叢が揺らされ乾いた葉擦れの音を立てる。相次ぐ原発の臨界事故により、生殖能力の劣った男が増え、数少ない「種馬」だけが精子を売って富豪になる未来。種なしの中でも更に下層の下半身を持つウマソー・イアザックは守衛をしながら、次々と想像したくない目に遭う。どう見てもディストピアな未来の悲劇譚なのだが、悲観的なのか脳天気なのか…名状しがたい彼のアイデンティティーに起因する故か読み心地は暗澹たるものではない。どんな世界でも人間は生きている。命を繋いでいくのだ。ラスト一文が秀逸。2020/02/26

ぐうぐう

15
原子力発電所の臨界事故が続発する世界を描く岩井俊二の小説『番犬は庭を守る』は、3.11後に発表された気まずさを、始終漂わせている。岩井は、10年以上前に書き始められた作品と説明しているが、3.11によって現実が先行してしまったのちの刊行は、やはりいただけない。もちろん、ここには岩井ならではのオリジナルでユニークな設定が活かされてはいる。しかし、現実が想定を凌駕してしまった現在、この小説は警告の意味合いを無くし、現実の後追いを余儀なくしている。2012/09/22

hutaro

9
殆どの男性が子どもを作る能力を失くし、限られた「種馬」だけが精子バンクに精子を売り裕福に暮らす中、ウマソーは「種なし」として底辺の暮らしをする。そんなウマソーが唯一できる仕事は、ある施設の門番だった。この施設がまた衝撃の施設だった。主人公ウマソーの性格が読めない。悲観的になったかと思えば急にハイになり通行人を襲ったり子どもを突き落としたりする。なんとも共感できないタイプの主人公。でもそうでもないとこんな世界では生きていけないのかもね。2019/06/30

kei@名古屋

8
文庫にて読了2020/02/19

ゆかーん

7
原発事故により、体に異常が次々と出てきてしまう未来の物語。決して遠い将来ではないと思えるような危機感を味わってしまった衝撃の一冊!2012/10/05

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