内容説明
日本陸軍瓦解の引き金となったインパール作戦。後に「無謀な作戦」の代名詞となった凄惨な戦いは、若き兵士たちに言語に絶する苦悩と、生への限りない渇望を強いた…。戦後六十五年。歴史小説の第一人者が描く、魂の戦記!その時、戦場で何が起こっていたのか。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
1929年和歌山県生まれ。東北大学法学部卒業。78年、「深重の海」で第79回直木賞、「夢のまた夢」で第29回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mj
36
明るい材料など聞いたことがない戦闘、インパール作戦。兵站軽視、精神重視の最たる我が国の軍の姿。あまりにも救いがない。手足を縛ったまま自衛隊を国際平和協力業務に放り込んでいる我々は、似た過ちを犯していないとは言えないかもしれない。2017/09/23
ちゃま坊
18
太平洋戦争ビルマ戦線。「満州国演義」で次郎が戦死したインパール作戦だ。兵站の重要性を無視した将校の責任は重い。英国は制空権を握って物資をドンドン補給している。一方日本軍の補給路は遮断されている。食料弾薬医薬品の不足とマラリヤ、アメーバー赤痢、吸血ヒル、猛獣のいる密林。戦闘より行軍で多くの命を失った無謀な作戦。敵軍よりも無能な味方司令官に怒りを感じる。2018/05/14
岡本
6
碌な武器も持てず上官の命令に従い玉砕していった多くの若者達の戦いの描写が細かく描かれた一冊。死亡率80%を超えたこの作戦に従事した兵士達の証言を元に丁寧に纏められていましたね。技術開発をしても導入しない参謀達や後方の安全地域で悠々と作戦を発令する上官達に苛立ちを感じながらも読み進めました。命を賭して国を守った先人達を忘れずに後世に紡がねば…2013/10/02
シャコンヌ
5
旧式の兵器と僅かな食糧で最前線に送られ、栄養失調とマラリアに耐えながら火力において圧倒する相手に対し、銃剣突撃や肉攻手によって勇猛果敢に戦うも泥濘の中に倒れていった大勢の若き兵士たち。インパール作戦における日本陸軍の犠牲者数12万4千人、犠牲者率は80%に上ったという。今の日本の平和がこれら尊い犠牲のうえに成り立っていることを我々は忘れてはいけないと思う。許せないのは、敵弾が絶対命中しない後方陣地に居座り、敵情報も把握しないまま味方兵士の損害もかえりみず勝算の全くない突撃命令を発し続けた指揮官たちである。2010/09/19
友川サイコー
4
国家機能を動かす者の資質が劣悪である時、国民は塗炭の苦しみを味わうということは、先の大戦で証明された事実である、との巻末の一文が身に沁みる。安倍三選という地獄を目前にした猛暑の昼下がり。2018/07/25