内容説明
四十八歳の真二は、二年前に編集者の仕事を辞め、妻とも離婚していた。そんな彼の元に、半年前、父の葬儀で喧嘩したきりの兄・健一郎から、突然父の形見のヴァイオリンが届く。そのヴァイオリンを修理に出した直後、健一郎の病を知る。兄の思いをはかった真二は、ヴァイオリンの作者を求めてイギリスを訪れ、そこでガイドとして現われた響子に、初恋の女性の面影を重ねるのだった。多くの人の親切に助けられ、ついに辿り着いた「父の背中」と、そこで真二が見たものは…。待望久しい感動の長篇小説。
著者等紹介
さだまさし[サダマサシ]
1952年長崎市生まれ。73年、フォークデュオ・グレープとしてデビュー。『精霊流し』『無縁坂』が大ヒット。76年のソロデビュー後も、『雨やどり』『関白宣言』『北の国から』など数々の大ヒット曲を生み出す。2002年3月には、ソロになってから通算3000回目のコンサートを達成。同年9月よりデビュー30周年コンサートを東京・名古屋・大阪で開催。01年、初の書き下ろし長編小説『精霊流し』、02年『解夏』、04年『眉山』(すべて幻冬舎文庫)を発表。08年、最新アルバム『Mist』をリリース(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaC
100
図書館から借りてきて一ヶ月以上放ってあったのを返却期限直前に慌てて読み始めたら、予想外の感動長編で一気読みになった。真二と健一郎、真二と響子と花子、きっとうまくいくよね。2016/02/13
名古屋ケムンパス
66
癒しの物語です。7歳のおしゃまな花子ちゃんが愛らしくて、愛しくて堪らないのです。主人公の真二でなくても心を奪われそうです。物語は兄から届けられた急逝した父の形見のヴァイオリン、「スコティッシュ・フィドル」の作者を尋ねる旅を描いて展開します。スコットランドに真二が追い求めたのは、教育実習にやってきた英語教師への初恋に纏わる「茨の木」の情景であり、言い争いをして疎遠になったままの郷里の家族を慕う裡に秘めた自らの想いでした。共に旅するツアーガイドの響子との出会いは真二に再び「初恋」の奇跡を起こしました。2016/12/19
ゆみねこ
57
亡き父の遺品のヴァイオリンのルーツを探す旅に、イギリスへ渡った真二。湖水地方の小さなホテルの主、マリーさんが素敵で、こんな場所に泊まってみたいと思ったり。ラストで兄の思いに気づいたシーン、響子の演奏、涙が出ました。さださんは、物語作りが上手いですね。お勧めです。2014/04/02
ちゃんみー
57
さださんらしく、バイオリンが登場。しかも父の形見のバイオリンのルーツを辿ってイギリスまで行ってしまうというお話。父との確執と父の死、兄の病気、別れた嫁さんとの思い出なぞを織り交ぜながらの物語で、バイオリン職人探しの旅はとても有意義なものであった。真二と響子と花子はきっと家族になっていくんだろうな。さださんのを読んでるといつも思うんだけど、全ての人に幸あれ!って思っちゃうよね。2013/12/24
美登利
53
さださんご自身がヴァイオリンをやってらしたのですよね。この中に出てくる響子さんのように夢やぶれて辞めたことは前に読んだことがあります。しかし、とても心が綺麗になるような温かみのある物語になっています。個々の問題は決して明るい物ではないし、深刻なのですが。それを補っても素晴らしい魅力に溢れた登場人物が出てきます。外国での日常を離れた生活、様々な人に出会うことで濃厚に過ぎる日々は、恋に落ちる予感を秘めていました。幸せになって欲しいと思いながら読み終えました。九州弁が懐かしく、そこだけ声に出して読んでいました。2014/04/04