内容説明
江戸・日本橋に「玄冶店」と呼ばれる狭い路地があった。黒板塀に囲まれた妾宅が並ぶその一角で、元・花魁のお玉は小間物屋「糸玉」を営んでいる。そこには小粋だが懸命に生きている女たちが出入りしていた。「糸玉」の暖簾をくぐる人々の切なくて心温まる八つの物語。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年北海道函館市生まれ。函館大谷女子短大卒業。95年「幻の声」でオール読物新人賞受賞。2000年「深川恋物語」で吉川英治文学新人賞を受賞。01年「余寒の雪」で中山義秀文学賞を受賞
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感想・レビュー
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keiトモニ
33
“自分が生きる道、暮らし易い場所は伊勢の津ではなく、この江戸であり玄冶店で他の土地では暮らせない”☚よく決心したお玉。それでこそ江戸っ子だ。と感心したのに追いかけるお玉さん。青木先生との夢の末はこうだよと、お花の姿に遠い将来の自分の姿をみたでしょ。“惚れあった男と女でもその間柄がいつまでも続くものではない。いや日々その形は変化する。まして日陰の女達には…お玉はこの世の無常をしみじみと感じた”のにねぇ。さて、おとめとあさとを前にして湯屋でのお喜代の啖呵、気持ちいいね。久しぶりの辰巳芸者の心意気、さすがだね。2016/09/02
さなごん
27
どうなっちゃうのかなあと思ったけどラストよかった!切り開いていく女性が多くて元気出た。お幸せに2015/12/28
星落秋風五丈原
12
誰かが熱くなれば、誰かが冷ます。 少々の行き違いや、きつい言葉の応酬も、お互いに歩み寄れば、元通り。 皆が賑やかに正月を祝う中、妾宅の多いため逆にひっそりしてしまう玄冶店で、共に日陰の暮らしをしてきたからなのか、 血の繋がりはなくても、彼女達の絆、互いを思う心はとても強い。 ある時は、相手のためを思って何も言わず見守る。 またある時は、あえて、きつい言葉で目を覚ますよう説く。 でも、いずれの時も、本当に、相手のためを思えばこその 行動だ。この玄冶店には「おかたじけ」が涙と恋の思い出の数だけ 積もっている。2004/07/12
コージー
11
玄冶店に住むいろんな事情の女性たち(主にお玉さん)のお話。とても人間くさくて情もある。時代物がホッとするのはなぜだろうか。お玉さん、幸せになれるのかはわからないが、前向きな終わり方で良かった。2020/05/30
かよ
4
粋なお姐さん達の日常を描いている大きな出来事は無いでもゆったりした流れが好きです宇江佐ワールドを楽しみました 2018/01/17