内容説明
石の表面から奥へと、ほりすすむにつれて、ダビデが、しだいに、すがたを見せはじめました。それはまるで、大理石のなかにかくれているダビデをミケランジェロが時間をかけて、ゆっくりとひっぱりだしているかのようでした。
著者等紹介
サトクリフ,ジェーン[サトクリフ,ジェーン] [Sutcliffe,Jane]
アメリカ、ロードアイランド州生まれ。コネティカット大学とペンシルバニア州立大学でコミュニケーション科学を専攻。児童書作家。子どもに向けた伝記を数多く執筆している。現在は、コネティカット州トランドの農場で家族とともに暮らしている
シェリー,ジョン[シェリー,ジョン] [Shelley,John]
イギリス、バーミンガム生まれ。1983年よりロンドンでイラストレーターとして活動をはじめる。以降、広告やキャラクターグッズなどを制作するかたわら、子どもの本の世界でも活躍している。21年の日本滞在を経て、イギリスに拠点を移すが、現在も日本での仕事を継続的におこなっている
なかがわちひろ[ナカガワチヒロ]
東京芸術大学美術学部卒業。『天使のかいかた』(理論社)で日本絵本賞読者賞を受賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』(偕成社)で第47回野間児童文芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
96
フィレンツェの町の真ん中に放置された巨大な大理石。旧約聖書の伝説の巨人ゴリアテを倒した英雄ダビデ像を奉るため、運ばれてきた石。でも、彫刻家が仕事を放り出し、何十年もそのままになっていました。後を引き受けたのは、故郷に帰ってきた26歳のミケランジェロ。大理石の中に隠れているダビデを引っ張り出すように、3年をかけ完成させるまでを描いた絵本です。600年ほど昔の一人のアーティストの挑戦。なんてドラマチック♪ 2013年9月初版。2015/09/28
Kawai Hideki
89
ミケランジェロのダビデ像の製作秘話。フィレンツェの街に40年も放置されていた巨大な大理石。当時のフィレンツェの政治的状況から、旧約聖書の英雄ダビデを讃える像を彫るために用意されていたのだが、誰も彫れなかったのだ。始めの彫刻家は足のあたりに穴を開けただけ。次の彫刻家も結局放置。そこに呼ばれたのがミケランジェロ。そして、誰も見たことがないダビデ像が完成。ゴリアテとの戦いを前にして、鎧も服も身につけず、右手に石、左手に投石機を手にし、挑むように前方を睨みつけるダビデ。名作の歴史的には経緯と価値がよく分かった。2016/04/24
モリー
28
ミケランジェロの傑作、ダビデ像。40年も放置され、邪魔物扱いされていた巨大な大理石から彫り出されたもので、高さ5メートル近くある像を彫るのに3年の歳月を要したそうです。「背景にある物語をしると、作品をみる楽しさが一段と深まる」(画家あとがきより引用)ものですね。ところで、本書を読めば分かるのですが、何故当時のフィレンツェに旧約聖書の英雄ダビデ像が置かれたのか、聖書の知識と当時のフィレンツェの置かれた政治的状況が分かりやすく説明されており、得心がいきました。ルネサンス美術の代表作という理解だけでは勿体無い。2018/09/01
aisu
21
イラストが良質で、一枚の絵として見てても飽きない。ミケランジェロがどうダビデを作ったか、また当時のフィレンツェの雰囲気がよくわかった。文章も(翻訳も)読みやすい。2015/01/28
Gummo
20
40年近くフィレンツェに放置されていた巨石がダビデ像に生まれ変わるまでの物語。旧約聖書の英雄の像を彫るためにはるばる運ばれたものの、幾人もの彫刻家が途中で彫るのをあきらめた巨石に、たった一人で戦いを挑むミケランジェロ。その姿はまさに巨人ゴリアテに挑むダビデのよう。3年後の1504年、29歳の時、彼はついに像を完成させる。ミケランジェロは巨石に打ち勝ち、彫刻界の英雄となったのだった。巨石の中に隠れているダビデの姿をありありと見ることができたミケランジェロ。人間の秘めた可能性を示唆しているようにも思える。2013/10/11