出版社内容情報
雪深い山おくにとじこめられた若い母と赤んぼう。二人を夜ごとに襲う大グマ。守ってくれたのは……アイヌ語のウェペケレ(民話)。 小学校低学年~中学年
内容説明
この物語は、アイヌ語で語られたウエペケレ(民話)を現代の日本語に直し、さらに絵本の文章にするために手を加えたものです。アイヌの人びとは、自分の手で作った四つ足がついて頭のあるものは、すべて魂がはいっているのだと信じていました。特にお守りは、ふだんは決して人には見せず、肌身離さず持っているものだったのですが、精神の良い人に心をこめて作ってもらったものは、ほんとうに魂がはいっていて、お守りの役目をはたしてくれると信じていました。ですから、この話は、私たちには、なんとなく本当だと考えられるような話なのです。この話そのものが、クマの恋が原因なわけですが、このクマの気持ちを原文では「たとえどこへ蹴落とされようと、どんな悪い神にされようとかまわない」というほどに思いつめているのです。人間の娘をかどわかしたことで、他の神々から「列をなして抗議がおしよせ」、父神や兄神にひどくしかられても、それでも諦らめることができないのです。このあたり、とても人間的な感じがしますし、神と人間は平等であり、神は恋にまどうこともあるし、悪いことをすれば罰せられるのだという、アイヌの考え方がよくあらわれていると思います。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
33
私の実家には、父が北海道土産として買って来た木彫りの熊が長いこと飾られていました。しかし、二代目の熊にその座を奪われてしました。その後、三代目の熊がウイスキーの瓶を抱いてやって来ました。一代目の熊は全身に細かい筋が刻まれ、荒々しい表情で本当に魂が入っているようでした。子供の私にはに恐ろしく感じられるほどでした。アイヌの民話、木彫りのオオカミに守られた若い女性とその子供の話を読み、木彫りの熊を思い出しました。今にしての思えば、一代目の熊にはアイヌの神が宿っていたような気がします。2018/10/13
山猫
21
人妻に横恋慕するなどという邪な心を持つ熊は、本当はカムイとして祀ってもらえないんじゃないかと思うが………「ところで、北海道にオオカミっていたんだっけ?本州には(絶滅したとされる)ニホンオオカミがいたけど」と思って調べたら、あちらにはエゾオオカミ(これまた絶滅したとされる)がいたそうな。「でも、ヒグマとは棲み分けてたのでは?」などと考えてしまった。2020/08/08
かおりんご
21
絵本。オオカミは、いいカムイなんだね。読み聞かせるには、ある程度のアイヌ情報が必要かも。家に入るときのルールを知っていた方が楽しめる。2020/01/12
おはなし会 芽ぶっく
15
アイヌの民話。アイヌの人々は、自分の手で作った四つ足がついて頭のあるものは全て魂が入っていると信じています。兄が妹に作った小さな木彫りのおおかみのお守りが、妹を救ったのは魂が入っているからですね。人妻に横恋慕してしまったクマでさえも罰せられるもカムイとして神の国へ返す、対等のようで崇めている文化そのものが描かれています。2021/03/15
海(カイ)
14
【図書館】最後の良くないことをした熊でも、魂を丁寧に神の国へかえしてあげるというところが、素晴らしいなと思った。2014/10/23