教皇ヒュアキントス―ヴァーノン・リー幻想小説集

リー，ヴァーノン【著】〈Ｌｅｅ，Ｖｅｒｎｏｎ〉/中野 善夫【訳】

国書刊行会（2015/02発売）

• サイズ A5判／ページ数 501p／高さ 22cm
• 商品コード 9784336058669
• NDC分類 933
• Cコード C0097

出版社内容情報

伝説的な幻の女性作家ヴァーノン・リー、本邦初の決定版作品集。
古えへのノスタルジアを醸す甘美なる幻想小説集。

遠い過去から訪れる美しき異形の誘惑者――
伝説的な幻の女性作家ヴァーノン・リー、本邦初の決定版作品集。
いにしえへのノスタルジアを醸す甘美なる蠱惑的幻想小説集。　　

女神、悪魔、聖人、神々、聖母、ギリシャ、ラテン、ローマ、狂女、亡霊、超自然、宿命の女、人形、蛇、カストラート……彼方へと誘う魅惑の１４篇。

永遠の愛　
教皇ヒュアキントス　

内容説明

遠い過去から訪れる美しき異形の誘惑者―伝説的な幻の女性作家ヴァーノン・リー、本邦初の決定版作品集。古えへのノスタルジアを醸す甘美なる蠱惑的幻想小説集。

著者等紹介

リー，ヴァーノン［リー，ヴァーノン］ ［Ｌｅｅ，Ｖｅｒｎｏｎ］
１８５６‐１９３５。本名バイオレット・パジェット。筆名は男性名だが女性。１８世紀イタリア文化およびイタリア・ルネサンス期の音楽、文学、演劇の研究者としても知られ、社会史家、詩人、美学家の顔も持つ。幼少期よりフランス、ドイツ、スイス、イタリアを転々とし、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語を自在に操ったが、創作では主に英語を使用した。エッセイ、評論、紀行文など４０を越える著作があるが、現在まで長く読まれてきたのは、数は多くないものの古代・中世文化への憧憬に満ちた幻想怪奇的作風を特徴とする小説である

中野善夫［ナカノヨシオ］
１９６３年アメリカ合衆国テキサス州生まれ。立教大学理学研究科博士課程修了（理学博士）。英米幻想小説研究翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[藤月はな（灯れ松明の火）]

煌びやかで端正な文章で紡がれるのは豪奢な中世で異界のモノとの心が震える悩ましい交歓である。キリスト教の美徳の描かれ方が少々、くどいですがギリシャ神話の芳醇さや女性賛美も併せ持っています。蝋燭の灯の下で映し出される宗教画のような作品たちの美しさに勿体なくて夜に少しずつ、少しずつ、読んでいた本でした。ファム・ファタールものの「永遠の愛」、異界との匂わせるだけだが官能的な交歓に対する現世の常識との乖離が白々しく、思える「幻影の恋人」、「アルベリック王子と蛇女」がお気に入り。

2016/08/23

[コットン]

HANAさんお勧めの幻想小説集。自分が三百年前に死んだ女に恋をした「永遠の愛」や、画家が夫婦の肖像画のため招かれた家の夫人は二世紀半前に愛人を殺した女の生まれ変わり「幻影の恋人」など過去の女性の魅力が主人公を惑わす手腕が凄い！訳者あとがきによる作者・作品紹介も楽しいし、装画を手がけた銅版画家の林由紀子さんの作品も素敵だ。

2015/07/04

[HANA]

初版限定蔵書票付。一編一遍が異教の影や過去からの風、聖人伝説に彩られ、読みながら今は亡き遠い世界に思いを馳せらされるよう。どの話も基調となっているのは過去であり、遠くは神話時代、近くても数世代前、その影響を受けて破滅する人の何と多い事か。気に入ったのはファム・ファタルを主題とした数編。ひたすら恋い焦がれ誘惑に身を任せる「永遠の愛」や「ディオネア」等。「教皇ヒュアキントス」や「マダム・クラシンスカの伝説」も、黄金伝説や聖者伝を思わせてしみじみと良かった。読み終えるのが勿体なく思った一冊でありました。

2015/04/11

[かわうそ]

格調高い文章で紡がれる幻想譚に美しい装丁と書物としての重厚感が一体となって遠い異国を彷徨うかのような読書体験を味わうことのできる贅沢な作品集。「永遠の愛」「ディオネア」「フランドルのマルシュアス」がベスト３。

2015/06/09

[くさてる]

素晴らしい幻想小説集。堂々とした風格が漂う美しい装丁にまず惹かれましたが、読む側に深い教養を要求するタイプの難解な小説だったらどうしよう…と読むのを少しためらったのも事実。しかし、杞憂でした。確かにここで取りあげられている文化の知識があればさらに深く愉しめる内容ではあると思いますが、それ抜きであっても、この美麗な文章に酔い、そこから香り立つ人々の運命の匂いを追うだけでも、十分に楽しめます。そして、訳者の丁寧な解説がさらに小説の理解を助けてくれます。私のお気に入りは「ディオネア」と「人形」でした。お薦め。

2015/10/26