内容説明
三つの元気なお豆さんの話を聞きたいかい?…聞きたくないなら、話はこれでおしまい。人を喰った異色短篇からユーモアあふれる実験作品まで。『地下鉄のザジ』のレーモン・クノーによる軽やかな言語遊戯がつまった本邦初の短篇集。
著者等紹介
クノー,レーモン[クノー,レーモン][Queneau,Raymond]
1903年フランスのル・アーヴル生まれ。20年パリ大学に入学(専攻は哲学)。24年シュルレアリスム運動に参加。33年、処女長篇となる『はまむぎ』を発表、以降乾いたペシミズムの作風を確立した。38年にはガリマール社で百科事典の編集責任者となる。60年に潜在的文学工房(ウリポ)を創設、数学的理論と言語遊戯を駆使した文学実験を推進。つねにユーモアとパロディの感覚が伴う、新しい小説技法をさぐる作品を発表し続けた。76年没
塩塚秀一郎[シオツカシュウイチロウ]
1970年福岡県生まれ。東京大学教養学部卒業。現在、早稲田大学理工学術院准教授(フランス文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
83
円城塔やルイス・キャロル作品のような言葉遊びが好きな人には堪らん、ナンセンスと無意味で煙に巻くような短編小説集。「ささやかな名声」はヘンリー・ジェイムズの「本当の正しい事」の裏バージョンみたい。「何某という名の若きフランス人」は爆笑必至で、「アリス、フランスに行く」はそのまま、ルイス・キャロルへのオマージュである。個人的には戯曲「通りすがりに」が好き。今、存在し、暗黙の契約関係にある夫婦や恋人同士では得られなかった愛という不確定な事象への実存性が一瞬で証明されたのに最終列車で打ち破られるのは現実的2016/06/01
Gin&Tonic
20
パタフィジカル。実験的&前衛的。まさに言語遊戯。魅せられる。円城塔好きな人は好きそう?知的ユーモアとほんのりペーソス。わけわかんなくて笑うけど、時々切ない。「その時精神は……」「ディノ」「加法の空気力学的特性に関する若干の簡潔なる考察「あなたまかせのお話」が特に好き。おもしろかった。2015/12/20
梨
5
短篇集というよりクノーが書いた短い文章を片端から集めただけの感も否めないけど、ウリポに興味のある人なら最後の対談だけでも読む価値はあるはず。読んでいるうちになんとなく作者の特徴はつかめた気がする。変わったことは書いていないはずなのに奇妙というか、平凡な人が異常に巻き込まれるというか。「加法の空気力学的特性に関する若干の簡潔なる考察」のバカバカしさに感動。こういう真面目な顔で冗談を言う人は大好きです。しかしながら『地下鉄のザジ』を日本語訳で読む意義はあるのだろうかという疑問も残った。2009/06/30
まどの一哉
4
なにかふんわりした、完成されているのに完成感のない不思議な手触り。就寝前に聞かされているおとぎ話のような浮遊感がある。 「ディノ」「森のはずれに」:この連作ではディノという人語を操るというか人間と変わらぬ知性と感情を持つ犬が現れたり消えたり、いるのかいないのかわからない。ところでディノの声を聞けるのは語り手の男だけである。ディノは冷静な落着いたやつである。2023/01/30
neugierde
4
美術館で作品を見て回ってるような気分になる。2014/06/25