著者等紹介
ディレイニー,サミュエル・R.[ディレイニー,サミュエルR.][Delany,Samuel R.]
1942年ニューヨーク生まれ。ニューヨーク市立大学を中退後、漁船乗りやフォークシンガーとして世界を放浪、62年『アプターの宝石』でデビュー。該博な知識と詩的文体、多層的語りを駆使してメタファーに満ちた神話的作品を多数発表、アメリカン・ニューウェーヴの旗手として活躍。自伝The Motion of Light in Water:Sex and Science Fiction Writing in the East Village 1957‐65(88)はヒューゴー賞を受賞
大久保譲[オオクボユズル]
1969年生まれ。東京大学教養学部卒。現在埼玉大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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志ん魚
17
即興的にオーガナイズされる迷宮都市。既視感と未視感が同時に明滅する思弁の海を、まるで夢をドライブするかのように漂流する。。。などと書いてみたいものだが、ありていに言えば、永遠にフラグの立たないRPGを200時間ほどプレイさせていただいた感じである。しかもこの主人公たち、プレイヤーが寝落ちして目を離せば、誰彼かまわずすぐファッ(略。しかし、なぜこの作品がオールタイムベストSFとかっていうくくりで語られるのか。。。その理由は、ぜひナマコハンター諸兄ご自身の目で確かめていただきたい。2013/03/22
きゅー
11
大雑把なストーリーはこうだ。「青年キッドが男女問わず、くんずほぐれつの爛れたSEXをし続ける。彼は、ここぞというところで英雄的な行動を起こし、荒くれ者集団のボスになる。そして、初めて書いた詩が名士の目に止まり、詩集が印刷される。彼の詩集は大きな評判となり、街の人々はいつもキッドの噂をする。」主人公キッドは様々な面で作者ディレイニーの面影を強く残しているというのだから、どれだけナルシスティックな作品なんだと驚かされる。彼の作品には自伝的な要素が顔を見せることがあるようで、本書はその色が濃く出ているようだ。2021/02/16
スターライト
10
永い間、伝説の名をほしいままにしていた巨編を無事読了できたことを、まず喜びたい。直線的に進んでいた(と思われる)ストーリーは、その後急展開。特に最終章は複数のエピソードがパズルのようにちりばめられて文字通り錯綜し、読者は幻惑されてしまう。文章が途中で終わったり、途中から始まったりする手法も使うので、僕自身、この文章がどうつながるのか(あるいはつながらないのか)、戸惑う部分も。巻末の巽解説にあるように、結局「ダールグレン」とは何を示すのか明示されず、その判断は読者にゆだねられる。願わくば他の作品の邦訳も希望2011/07/18
キョウラン
9
アメリカの1960年代後半から1970年代前半のベトナム戦争泥沼化、オイルショック、ニクソン大統領の失墜あたりも考慮に入れると主人公キッドがニューヨークシティともみまがう都市ベローナが時空間ともども不条理をきたし、狂気の境をさまよっているゆえんも推察がつく。キッドが拾った漆黒のノートに彼自身の人生が書き込まれており(それなんて未来日記?)しかも物語が結末から冒頭へ回帰して物語を紡ぎ始めるトリッキーな内容(SFマガジン2011年9月号参照)やっと今更ながらに理解した感じ、やれやれw2012/03/26
すけきよ
5
ベローナの街自体が、この世界から遊離していて、両者の動くスピードに差異がある。赤方偏移のごとく、視界は歪み、時間と空間と認識の観測結果も変化をきたす。遊離しながらも、ある種の環に囚われており、そこには繰り返しが。しかし、キッドではなく、街こそが主体で、次のキッドを迎えることになる。……なんてことを、ひねくりながら、どうにか読了。しんどかった~2011/07/12