内容説明
それは天使の声なのか、悪魔の声なのか。去勢により、ボーイソプラノの美声を永遠に保ちつづけた男たち―カストラート。16世紀末に登場した、この蠱惑的な両性具有者たちは、イタリアを中心とした17、18世紀のヨーロッパで一世を風靡した。性差を超えて神の領域にまで至った彼らの歌声を聴き、人びとは我を忘れて恍惚となり、ヘンデル、モーツァルトをはじめとした多くの大作曲家たちは無限の霊感をうけた。壮麗無類なまでの栄誉と人気をかちえながらも、今世紀初頭に存在が完全に消滅したカストラートたちの謎の正体とは一体なんだったのか。彼らの栄光と悲惨が、その歴史と生活、そして30名にのぼる列伝を通して、今ここに解明される。
目次
1 カストラートの盛衰
2 カストラートの覇権の理由
3 カストラートの生活と時代
4 劇場の様子
5 カストラート列伝
6 あるカストラートの物語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
xxx
1
17,18世紀にオペラで活躍した去勢歌手、カストラートを専門に取り上げた書。半分以上が個々のカストラートの人物紹介に当てられている。カストラートの歴史自体は中世キリスト教の聖歌隊あたりまで遡れるらしいが、正確な記録は不明。彼らの活躍は主にイタリアであったがオペラの流行と同様に海外でも活躍していた(フランスはカストラートを禁止していたため例外)興味深い点は、教会は去勢を禁じていた一方で彼ら去勢男性は修道会に属さない形で聖職者になれた…など矛盾があった点である。(もちろん不具者として差別対象であった)2019/05/30
ポチ
1
現代からしたらカストラートは禁断のソプラノ。けど、昔も容認されていた訳じゃないにも関わらず、学校はあった。始まりが偶然なのかは謎だけど、カストラートを通して人のエゴを感じました。あと去勢手術って全去勢かと思っていました。違うのか…。音楽の為とはいえ、声を矯正し、子孫を成し得ない体になったカストラートはまるで籠の中でしか生きられない鳥のようで、そんな生き方ってどんな気持ちなんだろう。2013/09/19
Tsuyoshi
0
同時代の作曲家をはるかに超えるレベルで波瀾万丈なカストラートたちの人生。ユーモアのある文章も良い。史料の出典がないのと、ところどころ年号が明らかに間違ってるのが残念。2019/09/18