出版社内容情報
伊坂幸太郎[イサカ コウタロウ]
著・文・その他
内容説明
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!
著者等紹介
伊坂幸太郎[イサカコウタロウ]
1971年千葉県生まれ。2000年、『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。’04年、『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編賞を受賞。’08年、『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
317
面白かった!!『AX』『ホワイトラビット』ももちろん良かったが、これはこれぞ伊坂っていう感じがバンバンきた。ディストピアでの理不尽な正義、文章は露骨な表現はないが想像するとかなり恐ろしい世の中。その中でも『クスリ』と笑える所が好きだな。『正義』といのは難しいと初めて感じた。中途半端なら『偽善』となり、かといって『徹底的な正義』ははたして正義と言えるのか。正義を逆手に取ると最悪な環境になる。他人に正義を翳すのより自分自身を律していくのが一番なのかな。それにしてめ本当に面白かった!2018/04/18
こーた
249
この国の状況がひどくなる一方ならば、いっそ外国で暮らしてみようか。そう考えたことがある。だが同時におもうのだ。行ったさきの国だって、それなりの暮らしにくさはあるはずだ、と。どころか状況はもっとひどいかもしれない。となりの芝はいつだって青い。地球は丸くて果てがなく、社会はゆるく繋がって、生きづらさはどこまでも追いかけてくる。いっそ火星にでも住めば、何に煩わされることなく快適に暮らせるだろうか。そういう映画が、過去にあったような気がする。火星にひとり取り残される物語が。いや、あれはあれで十分過酷だったな。2019/04/19
デーカ
225
伊坂ワールド、ますます残虐になっている感じ。他の作品でもみられるが、「死」や「絶対的な権力」や「徹底的な暴力」など自分一人の力では抗えないモノへの恐怖がひしひしと伝わってきます。多田はやさしさを取り戻せたかな。2018/05/11
ゆきねこ
205
自白してもしなくても殺される。魔女狩り恐ろしい。これほど人間って醜い愚かなものなの?という疑問を持ち続けましたが、一気に読みました。伊坂さんらしい伏線が多重に張り巡らされています。終盤で正義のヒーローの正体が判明。しかも、ずっと敵だと思われていた人物の転向。井坂さんの他の物語と同様、勧善懲悪が気持ち良い。筆者は東北大学工学部の出身で、物理的、科学的な事象にも造詣が深い。物語の場面が多面的多重的に組み合わされ、複雑な建物のよう。全体がわかる頃には、秘密部屋がたくさん隠されていたことに驚き愉快になります。2021/02/11
nobby
198
「いっそのこと火星にでも住むつもり?」この台詞を121頁で目にして、ようやく想像と違う主題にたどり着き感嘆!序盤は住民相互監視による密告や公開処刑行う“平和警察”なる統治に恐怖を覚えるばかり。第二部・第三部とそれぞれ警察側、正義の味方の独白に切り替わってから物語に引き込まれる。黒いツナギ服を着て思いもよらない武器で立ち向かう様は痛快。そして迎える終盤での騙しだまされの攻防にはハラハラドキドキ。人物相関や何気ない事柄や蘊蓄をきちんと伏線回収するのはさすが。「現実なんてそんなもの」そんな作家の言葉が聴こえる…2018/05/02