内容説明
家柄と知性、すべてに恵まれた外務大臣は、自分が見た恥ずべき夢を格下のライバルに知られていると悩んだ末に…「マウントドレイゴ卿」。南方駐在員の夫を亡くして帰国した長女が明かした夫の秘密とは…「パーティの前に」。人間の不可解さを浮き彫りにする珠玉の6編。
著者等紹介
モーム,ウィリアム・サマセット[モーム,ウィリアムサマセット][Maugham,William Samerset]
1874‐1965。イギリスの劇作家、小説家。イギリス人の両親のもと、フランスで生まれる。幼くして両親を亡くし、イギリスの叔父に引き取られる。10代は学校生活になじめず読書に逃避。やがて演劇の面白さに目覚め、作家を志すが、現実的な選択として、医学校に入学。1897年、貧民街での実習経験をもとにした『ランベスのライザ』を出版。1907~1908年にはロンドンで上演された戯曲が次々に大成功を収め、社交界の名士となる。第一次大戦中は、英国諜報部員として諜報活動に従事。このときの経験が短編集『アシェンデン』に結実。40代以後は、ヨーロッパ各地や南太平洋の島々をたびたび訪れ、数々の短編を生み出した
木村政則[キムラマサノリ]
1968年生まれ。筑波大学大学院博士課程単位取得退学。大学非常勤講師。専門は20世紀イギリス小説(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ももたろう
56
主人公の肥大化し手に負えなくなった自尊心の唯一の治療法ーそれは「謝罪」だった。自分が悪いと思ったら、間髪入れずに誠意を込めて謝罪する。簡単なことなのに、簡単じゃない。それを邪魔するのが自尊心。人は誰しも「私が正しいのだ」と思いたい。マウントドレイゴ卿は、その自尊心ゆえに苦しむ。また、マウントドレイゴ卿の夢の話と現実の奇妙な一致は恐ろしい。これは「現代科学では解明できない出来事」の比喩だと捉えたが、何か言葉で表現できない恐ろしさがある。ユング心理学の「シンクロ二ティ」を文学作品にしたのかな?2016/11/26
KAZOO
52
モームの短編集は本当に面白いという気がします。人間研究にはかれの短編集をしばらく読むことをお勧めします。この本には有名な「雨」を含めて6つの短篇が収められています。どれもこれも皮肉な落ちがついています。2014/12/18
巨峰
45
さすが世界人モームの短編集だけあって、世界のいろんな場所で、いろんな人たちが出てくるのが楽しい。ミステリー風のものを集めたと訳者がいうだけあって、先の読みにくい作品が多くて読み進めているうちは楽しいのだけど、なんだか、オチがいまいちと言う感じかな。というか、ピンとこないというか。2011/09/24
りつこ
39
面白い!全く古さを感じさせないのは、人間どの時代においても不可解な存在だからなのだろうか。野暮ったく見えた女性が輝くような魅力を放ったり、完璧な政治家が悪夢にとりつかれたり、敬虔すぎる牧師が本人さえ知らなかった本性を現したり…。説明のつかないような人間の行動や心情を描きながらもその筆致はユーモアたっぷりで優しい。モームをもっと読まなくちゃ!(と読むたびに思う)2015/04/27
星落秋風五丈原
36
「ジェイン」「マウントドレイゴ卿」は「ジゴロとジゴレット」にも収録。「パーティの前に」は「カジュアリーナ・トリ―」に収録。2019/02/20