内容説明
妻の不貞に気づいた貴族の起こす猟奇的な事件を描いた表題作、黄金に取り憑かれた男の生涯を追う「ファチーノ・カーネ」、旅先で意気投合した男の遺品を恋人に届ける「ことづて」など、創作の才が横溢する短編集。ひとつひとつの物語が光源となって人間社会を照らし出す。
著者等紹介
バルザック,オノレ・ド[バルザック,オノレド][Balzac,Honor´e de]
1799‐1850。フランスの小説家。トゥール生まれ。17歳で代訴人の事務所に見習いとして入り、パリ大学法学部に通う。このころから文学者を志し、20歳のころパリ市内の屋根裏部屋に住んで小説を執筆し始める。人間を観察し、その心理を精密に描きつつ、社会全体をも映し出す長短編小説を次々に生み出し、巨大な作品群によってフランス社会そのものを表す「人間喜劇」を形成していく。旺盛な執筆活動の他に、年上の貴婦人たちと数々の浮き名を流したことでも知られる
宮下志朗[ミヤシタシロウ]
1947年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。フランス文学者。ラブレー、モンテーニュ、ゾラ、バルザックなど、幅広いフランス文学を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
85
表題作について。怖いといえば怖いのですが、それよりもエグイという感じがしました。しかし埋め込みの件は他作家の他作品でもあったような・・・。2023/11/26
優希
60
表題作が衝撃的でした。残酷系ホラーとでも言いましょうか。とにかく震えが止まりませんでした。他の短編もまぁ面白くはあるのですが、表題作を読んでしまうとその魅力も半減してしまうように感じました。この作品は私には合わなかったようです。2022/12/26
星落秋風五丈原
47
医師ビアンションがヴァンドームの町を歩いていると、荒れ果てた館が見えてきたので、つい入ってしまう。すると公証人に呼び止められる。屋敷は伯爵家のもので夫の死後、伯爵夫人は「自分が死亡した日から数えて50年間は死んだときの状態のまま屋敷を保存しておくこと」という不可思議な遺言を残して孤独に死んだという。興味を惹かれたビアンションが語り手を変えて館の謎に迫ってゆく。ちなみにこの真相については、塩野七生『イタリアからの手紙』にやはり同様のシチュエーションで同様のリベンジをしてやられたケースがあった。2023/01/18
KAZOO
41
短篇にしてはかなり衝撃的な内容が含まれています。当時の社会情勢を考えたりすると結構人目を引いた事件もあったのでしょう。5つの短篇すべてがいいというわけにはいかないのですがバルザックらしい作品は表題作なのでしょう。2014/11/27
巨峰
36
初バルザック。表題作はかなり恐ろしい話です。時代とはいえ、どうして誰も助けようとしなかったんだろうと。短編4つのうち、3つは、人妻と年下の若い男の話。2009/12/16