内容説明
神学校を足がかりに、ジュリヤンの野心はさらに燃え上がる。パリの貴族ラ・モール侯爵の秘書となり、社交界の華である侯爵令嬢マチルドの心をも手に入れる。しかし野望が達成されようとしたそのとき、レナール夫人から届いた一通の手紙で、物語は衝撃の結末を迎える。
著者等紹介
スタンダール[スタンダール][Stendhal]
1783‐1842。フランスの小説家。代々法曹家を生んだブルジョワの家庭に生まれる。7歳のとき熱愛していた母親を亡くす。その反動からか、王党派の父親に激しく反発し、自らは共和主義者となる。ナポレオンのイタリア遠征に参加し、陸軍少尉に任官。このときから生涯、イタリアを愛することになる。その後は官僚となり、多彩な女性遍歴など、派手な生活を送る。この間、『恋愛論』『赤と黒』などを書き上げる。1842年、卒中で死去
野崎歓[ノザキカン]
1959年生まれ。東京大学文学部准教授。フランス文学研究のほか、映画評論、文芸評論、エッセイなど幅広く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
48
題名「赤と黒」とは、主人公が目指す対象?それとも性格?熱く燃え上がる情熱と冷めた目を持つジュリヤン ソレル。登場人物の複雑な心理が克明に描かれていて、とても魅力的な小説でした。下巻、最終章に向けての、全てを受け入れたジュリヤンの安寧した心とマチルドの狂気は圧巻です!2016/11/25
ころこ
40
マチルドとクロワズノワ侯爵の結婚話、フェルヴァク夫人が絡んできて、しばらく退屈だった事態が動き始める。彼らの恋愛とは、身分が固定化された中で他者の欲望に見出される、差異化された見得の張り合いでしかない。マチルドが身分を超えて真の恋愛に燃え上がっているようにみえるが、身分を超えている自分に陶酔していて、普通の方法以上に自分のプレゼンスを高められるのかに腐心していたらそこから逸脱していたということだろう。レナール夫人に凶弾が向かったのは確かに裏切りの故だが、それでは読みとしては浅い気がする。本作は身分の社会構2023/10/12
くまさん
34
近代的な上流貴族の根強い自尊心や宗教的観念の色濃いこの物語になぜ、これほどまでに夢中になってしまうのか、それはおそらく青年ジュリヤンのみずみずしい若さと情熱による。退屈と名誉、そして幾重にも捻れた野心を支配するのは、他者のまなざしと気分ではないのか? その人でなければだめだという相手を、属性でも地位でもなく唯一無二の存在として愛することはそれほどまでに困難なことなのか? ジュリヤンとレナール夫人と令嬢マイルドのあいだで相互に交わされる感情の揺らぎと反転のなかで、文章そのものの魅力とともに多くを学んだ。2019/03/27
fseigojp
34
レナール夫人は自殺できない(カソリックのため)ので、贖罪司祭のすすめによる讒言を書いてジュリアンに殺されようとした? それと貴族の若い女と一緒になるのに嫉妬の感情も抱いた? うーん。わからん。 ジュリアンは激情に駆られレナール夫人を殺そうとしたのだが、無事とわかって最愛の人はマチルドではなくレナール夫人だったと思い知る。 ジュリアンは階級社会を告発して断頭台へ。 レナール夫人は心痛から衰弱死。 結局わかりやすいのはマチルドくらい。 2015/11/04
MINA
32
BSあらすじで、BGMでJUJUの『この夜を止めてよ』が流れてたからほぼずっと読みながら頭の中に曲が流れてた(笑)図書館に光文社新訳の『赤と黒』が無かったのでわざわざ注文。やっぱりあらすじで知ってると読みやすい。名作を前にして恐縮ではあるけれど…体調悪いからか集中力衰えてくると、もはやジュリヤンとマチルドの駆け引きとか諸々皆、己の環境や出自等自分の役どころに酔ってるだけのように思えてならずひたすら苛々。けどジュリヤンの生き様や、ラストシーンは、結構好き。ただ、一体どうしてレナール夫人は死んだんだ?2016/07/01