出版社内容情報
大学文芸部員が大学生に読んでほしい本を選ぶ、「2008大学読書人大賞」を受賞。
内容説明
地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。
著者等紹介
クラーク,アーサー・C.[クラーク,アーサーC.][Clarke,Arthur C.]
1917‐。イギリス生まれ。子供のころから熱烈なSFマニアだった。公務員、空軍士官を経て、1946年、短編小説「太陽系最後の日」で作家デビュー。その後『銀河帝国の崩壊』『幼年期の終わり』などの長編作を発表し、科学に関する豊富な知識を駆使したハードな作風でSF界の第一人者となる。スタンリー・キューブリックと一緒に構想した『2001年宇宙の旅』で、その名声は世界的なものに。現在はスリランカ在住
池田真紀子[イケダマキコ]
上智大学法学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
159
異星の知性体により宇宙秩序のために飼育される人類と地球の変貌を哲学的思索を交えて描く。国連事務総長や黒人青年の視点で得体の知れない統治者に迫るミステリー的展開が前半の推進力で、圧倒的な力を前にした人類の対立やユートピアの光景に社会や文明発達への鋭い洞察力が光る。質感が大きく変化する第3部を覆うのは産婆役に徹する石女オーヴァーロードの悠久の悲哀。この視点こそが「目先の快楽」だけを求め続けた人類の向かう先に強い説得力をもたらしている。畏怖すら覚える鮮烈なイメージをもって人類の思い違いに警鐘を鳴らすSFの傑作。2021/11/23
まふ
141
地球人類の生存時期を幼年期、青年期、晩年期と規定して超マクロの観点から想像したスケールの大きな作品。第1部(幼年期)はオーヴァーロードが姿を見せず、第2部(青年期)で姿を現し、第3部(晩年期)ではオーヴァーロード自身の知らない世界へと展開される、という設定である。一体地球とは、銀河系とは、宇宙とは何ものなのかを突き詰めて考えると、このような「観念的世界」が生まれてくるのだろう。「地球外知的生命体」とはどのような生き物なのか、いつ頃我々人類は彼らに遭遇できるのか、まことに興味深い。G1000。2023/12/29
buchipanda3
129
結構昔の作品だが、普遍的かつ超然的な観点で突き詰めた独特な着想に驚かされた。冒頭の都市上空に巨大宇宙船現るという象徴的な場面に頬が緩む。異星人オーヴァーロードの狙いは何か。彼らの容姿がまた意味深。最後に行き着いたあの事象が示唆するもの、それは究極の進化にも見える。ただ既存の価値観だと良かったのか判別できない。でもあれは抽象的なもので、今後実際に起こりうる具体的な形態のヒントになるかも。そう思うと普段使われない箇所の脳みそのツボが刺激されたかのように軽い興奮と共に思考が巡った。あとクジラの存在はやはり特別。2020/06/22
星落秋風五丈原
127
【ガーディアン必読1000冊】第二章【黄金期】はオーヴァーロード達に統治されたために、図らずも世界平和が実現してしまったという正にタイトル通りの光景が描かれる。ならば万々歳ではないか、これが理想というものではないかと思いたくなるが、一方でマイナス面もある。どこをどう取っても自分達より優れているオーヴァーロードを前にして、科学も芸術もこれ以上発展しなくなったのだ。ということは、トップに立つものがどこか欠けている存在であった方が、或いは世界はどこかが必ず渇いていた方が発展が見込めるということになる。2020/03/06
zero1
113
もし地球人より進んだ生命体がやってきたら。我々は彼らをどのように受け入れるか?受け入れないか?クラークといえば「2001年」だが、「ジェノサイド」(高野)にも通じるテーマ。日本人なら排除したがるだろう。異質なものに対して排他的だから。結末を【地球人の終わり】と考えている方が意外に多いが、文字通り【進化して次のステージに進んだ】と私は解釈したい。描かれているのはオーバーロード?それとも地球人?この作品を読めば、核兵器の開発競争がいかに愚かなのか分かる。金と情熱は別なところに使うべき。前に読んだ作品を登録。