内容説明
ナポレオン失脚後のフランス。貧しい家に育った青年ジュリヤン・ソレルは、立身のため僧職に身を投じる。やがて貴族であるレナール家の家庭教師となり、その美貌からレナール夫人に慕われるようになる。ジュリヤンは金持ちへの反発と野心から、夫人を誘惑するのだが…。
著者等紹介
スタンダール[スタンダール][Stendhal]
1783‐1842。フランスの小説家。代々法曹家を生んだブルジョワの家庭に生まれる。7歳のとき熱愛していた母親を亡くす。その反動からか、王党派の父親に激しく反発し、自らは共和主義者となる。16歳のとき陸軍少尉に任官し、ナポレオンのイタリア遠征に参加。このときから生涯、イタリアを愛することになる。その後は官僚となり、多彩な女性遍歴など、派手な生活を送る。この間、『恋愛論』『赤と黒』などを書き上げる。1842年、脳出血で死去
野崎歓[ノザキカン]
1959年生まれ。東京大学文学部准教授。フランス文学研究のほか、映画評論、文芸評論、エッセイなど幅広く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
45
各章のタイトルはその章の出来事を象徴的に表していて、タイトルの直後にある引用による警句があることで読者の深層に留める効果を生んでいる。「レナール」といったり「町長」といったり登場人物の呼び方が変わるのが読み辛い一因だが、この場合はレナールの社会的立場、例えばヴァルノの政治的な対立を読者の深層に訴えかけたい作者の企みだ。目まぐるしく変わる社会で英雄主義に乗り遅れた若者の尊大な自我を描く。当時の社会情勢という表層と、日本の戦後社会にも当てはまりそうな普遍的な深層とを表現しており、本歌取りされるのはそのためだ。2023/10/05
fseigojp
33
ジュリアンよりレナール夫人の可憐さが引き立つ 注:ジャンセニズムとは神の恩寵の意味の絶対化と人間の非力さの強調が本義であり、コルネリウス・ヤンセンの著作『アウグスティヌス~人間の本性の健全さについて』に由来する。カトリック教会からは異端とされた。 7月革命を予言していたとの自負から1830年代記と副題が付けられた2015/09/17
みつ
30
高校生の時に新潮文庫で読んで以来、半世紀ぶりの再読。主人公ジュリヤン・ソレルとヒロインたちの名前、それに「赤と黒」が象徴しているものが記憶のすべて。訳のせいもあるのだろうが、19世紀前半の長篇にもかかわらず異常なまでに透明度の高い文章にまず驚く。また、主人公がナポレオンに憧れ、「二十年前ならここで英雄としての人生が始まっただろうに、そんな時はもう永遠に過ぎ去ったんだ!」(p391)と嘆くくだりは、今年後半ナポレオンが顔を見せる諸作を読んだところに繋がり感懐深い。下巻ではもうひとりのヒロインにも出会うはず。2024/12/24
シュラフ
29
主人公は野心家の若者ジュリヤン・ソレルなのであるが、その恋人となるレナール夫人が圧倒的な存在感。貴族夫人と農民の子、3人の子の母とその家庭教師、30女と19の青年、結ばれてはいけない関係なのだが、2人は関係してしまう。ソレルは夫人に対してどこか醒めている。男と女の関係はホレたほうが負け。夫人のソレルに対する献身ぶりが痛々しい。世間知らずの夫人のはずなのだが、2人の関係が世間にばれそうになったときになぜか力強くなる。そして関係を続けるのが無理になると、突如として良心の呵責に苛まれる。あ~、女は分からない。2016/11/22
星落秋風五丈原
28
【ガーディアン必読1000冊】貧しい育ちのジュリアン・ソレルの恋と野望の物語。人妻を誘惑するつもりが恋の病に取りつかれてしまう詰めの甘さがいかにも若さ。2006/09/04