内容説明
新堂レイは有名ブランドHに就職したばかりの新人広報。彼女は、海で偶然再会した同級生の大路尚純と昨年夏から付き合っている。尚純は大学生。彼が両親と暮らす文京区小日向の家で、兄夫婦が同居をし始めた―。それぞれが関わり合って淡々とした日常を紡ぎだす。お互いに踏み込むことのできない「聖跡」を抱えながらも―。四人の視点で「春夏秋冬」を描き出す。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒。’97年『最後の息子』で第84回文學界新人賞を受賞し作家デビュー。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞。’07年、『悪人』で大佛次郎賞、毎日出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
199
とある家族の日常。両親、兄夫婦、弟と恋人、兄の友人。それぞれに秘密がある。そして秘密を抱えながら生きている。「パレード」を思い出す。特に両親の秘密は墓場まで持っていくレベルだろう。日常に潜む違和感の質感ある描写が、吉田修一さんの作品の妙味だと思う。各登場人物の目線で描かれる物語は読みやすい。読み進むうちにそれぞれの秘密に行き当たり驚愕する。このギャップの楽しさ。人間、長く生きると程度の差はあれど秘密も増えるのだろう。そしてお互いの実家で育った環境のギャップが実にリアル。吉田修一さんらしさを堪能出来た作品。2018/03/24
にいにい
108
吉田修一さんの4作品目。これも、深いなぁ~。ごく日常な生活が進むが、登場人物それぞれが、秘密を持っている。不安を持っている。いい人生を歩みたいと願っている。それらの関係が視点を変えて展開される。専業主婦って、能力が高く、堂々としていて、一人でも十分仕事が出来たとしても、「ひなた」から追われる不安を持っているんだ?夫との関係の永遠性に関する疑問。人に頼り切れない心情。吉田さんは、難しい課題を投げかける。じゃ、どうすればいいのという答えは見つけられるのか?吉田作品のファンになる一冊。ひなたに居ていいですか?2014/07/04
ゴンゾウ@新潮部
102
恐ろしい小説だ。恋人、夫婦、親子それぞれに秘密を抱えて生きている。平穏で平和な家族を装いながら仮面をかぶって生きている。どれが正しい姿かわからなくなる。何を信じていいのか。2016/08/18
じいじ
98
周り、どこにもいそうな二組のオトコとオンナ。そんな四人の日常も、吉田修一の手にかかると面白い物語に変身します。ところどころで、昔の自分と重なる場面が出てきて、忘れていた懐かしい想い出が甦ってきます。とりわけ,住み馴れた隣町、今でも訪れる柴又帝釈天や寅さん記念館、江戸川の土手…のくだりは嬉しくなりました。それにしても、女性の仕種やファッション描写は、女流作家が書いたのでは、と見まがうほど繊細で巧い。とても読み心地の良い小説です。2019/10/16
ユザキ部長
98
男女4人それぞれの生き方。茗荷谷駅を降りた文京区小日向の家は急坂にあり、まれに地面ではなく自分自身が斜めに傾いてる錯覚に陥る。開けっ広げな性格の母親は実はとても苦しい人生を送った。子供達にはその斜めの坂でも心機一転、生きていって欲しい。2015/08/09