内容説明
汽車が好きなことにかけては、誰にも負けない「阿房堂南蛮軒」こと阿川先生。ただ汽車に乗る、そのためだけに、欧州、アフリカ、カナダ、アメリカ、果ては、メキシコ、エジプトまで―畸人同行、あるいは単身、世界中を経巡った!漫遊紀行エッセイの歴史に遺る名作が、精選12輛の新編成で、ただいま発車!詩情と笑いが満載の特別列車に、お乗り逃しなく。
目次
欧州畸人特急
マダガスカル阿房列車
キリマンジャロの獅子
アガワ峡谷紅葉列車
カナダ横断とろとろ特急
元祖スコットランド阿房列車
降誕祭フロリダ阿房列車
最終オリエント急行
夕暮特急
アステカの鷲
チワーワ太平洋鉄道
ピラミッド阿房列車
著者等紹介
阿川弘之[アガワヒロユキ]
1920年、広島県生まれ。’42年に、東大国文科を繰り上げ卒業し、海軍予備学生として海軍に入る。海軍大尉として復員後、志賀直哉の知遇を得て師事。53年、学徒兵体験に基づく『春の城』で読売文学賞を受賞。’94年に、『志賀直哉』により、野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。’99年、文化勲章受章。’02年には、『食味風々録』で読売文学賞を再び受ける。芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テイネハイランド
11
阿川弘之の海外鉄道旅行記。気位は高いが人懐っこく諧謔を愛する性格とその鋭い観察眼があいまって、旅先で知り合った人たちとの交流が随所に描かれている。おなじみの文士仲間(北杜夫/遠藤周作/開高健など)やご家族(娘の阿川佐和子さん等)もちらと出てきてその会話がなかなか楽しい。マダガスカルでは、現地の機関士と交渉して機関車に特別に乗せてもらい、適切なタイミングで汽笛を鳴らしたりして、「乗り鉄」としての一面も存分に見せていたりもする。鉄道に興味がない人でも面白く読めるのではなかろうか?2015/11/21
churu
6
南蛮阿房列車傑作選。未読の「ピラミッド阿房列車」目当てに購入。汽車に乗るだけが目的の文学の元祖内田百閒の風味を海外版で継承した阿川弘之。発展拡大させた宮脇俊三。我が道を行く依怙地さは受け継ぎつつ各人異なる味わい。阿川さんの特色として人物描写の巧みさを挙げたい。この本には未収録だが、著者の偏屈を懸命に宥める開高健が忘れ難い。別の時にふと弱音を漏らす開高氏をさりげなく労る著者の筆は、その後の早逝を予期させるようで痛ましい。三巨頭の後継が出現しないのは、正統なユーモアの文学とライターの紀行文との差なのだろうか?2021/06/28
hitsuji023
6
著者の汽車が好きだという思いが溢れる一冊。所々はさまれるユーモアがある会話も面白い。2014/08/19
feodor
5
北杜夫・遠藤周作と旅したフランスもおもしろかったけれども、随所随所にユーモアとペーソスが漂う素敵な阿房列車。 そして、今はよりいっそう鉄道がつまらなくなってしまったのか、それとも充実してきたのかわからないけれども、この時期は鉄道というものが如何に海外ではままならないものなのか、というのも伝わってきた。数時間遅れも普通、というレベルなのね。人を見、鉄道を見、というものの中で、しっかりと国や地域が伝わってくるのがすごいと思う。2011/04/10
なかなまり
3
内田百閒先生、阿呆列車の海外バージョン。阿川佐和子さんのお父さんです、最後に少しだけ阿川さんが登場します。観光にはさほど興味なし、それぞれ軸は違うんでしょうけど、沢木耕太郎と似たものを感じました。2015/02/07