内容説明
満席で飛び立ったジェット機内から、一人の女が消えた!?新聞記者の冬木悟郎は、人妻・朝岡美那子失踪の謎を追って、彼女の郷里・福岡へ。そこで彼は、美那子をかつて愛していた男の失踪、そして殺人事件に出遭う。愛しい女に対して深まりゆく疑惑。蒸発の真相は…。男女の愛を叙情豊かに活写したミステリーの名著待望の復刊。「日本推理作家協会賞」受賞作。
著者等紹介
夏樹静子[ナツキシズコ]
東京都生まれ。慶應義塾大学英文学科卒。大学在学中に『すれ違った死』が江戸川乱歩賞候補になる。1970年、『天使が消えていく』が再び江戸川乱歩賞候補。’73年、『蒸発』で第26回日本推理作家協会賞。丹念な取材と繊細な心理描写、着想の斬新さで新テーマに挑みつづける。長年にわたり、水準の高い多彩な作品群を生み、2006年には第10回日本ミステリー文学大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヨーコ・オクダ
34
目的地にあと少しで到着するという飛行機内で1人の女性客が居なくなっていることが判明。大筋ではその女性の行方を探すストーリーと言えるけど、興味深いエピソードがいくつも絡めてあって密度が高い作品。でも、単純に複雑な内容にして真相を隠しているのではないのが巧いところ。この作品に登場する誰かを愛する男たちと女たち。それぞれに影があったり、打算があったり…そして何らかのタイミングが合うたりズレたりしたがために悲しい結末に結びついて…。最後まで正統派の探偵役ヅラをしていた新聞記者・冬木クン、君も反省せなアカンで!?2019/08/14
coco夏ko10角
18
新聞記者・冬木は失踪した不倫相手を探すが…。そちらの事件の謎はそうだったのか、となるも、読後振り返ってみると冬木の妻子が気持ち・体ともにほったらかしなのがなんだかきた。あと飛行中のジェット機から乗客が消失して「怪談」ですむものなの…?2022/03/02
らなん
12
夏樹さん52冊目。2007年、文庫。記者である冬木のW不倫相手の蒸発からの、彼女の過去の知人が犯罪の被害者に。厚さのある文庫の中で、人が入り乱れ、場所も移動し、なかなかの重量でした。夏樹さんの長編2作品目で、1972年出版の文庫化。母性の喪失は、「文明の公害」だそうで、何故に母性だけ指弾されるのか、意味不明。2021/07/16
hit4papa
10
人妻の失踪=蒸発をめぐる殺人ミステリです。不倫を扱っているので、湿度の高いドロドロの愛憎ドラマになっています。出だしはうっとうしいのですが、飛行機からの人間消失といった謎解き要素が加わると、俄然、面白味が盛り返します。最後の最後に、どうして不倫という要素をこの作品に持ち込にだかが分かる仕組みです。読者によって肌に合う合わないがあるのかもしれませんが、女性の情念を描いた作品として良くできていると思います。
さとむ
9
なぜ、どのように蒸発してしまったのかがなかなかわからず、最後まで引き込まれる。西村京太郎をひさしぶりに読んでみたくもなった。2015/07/19