内容説明
「番茶も出花。お茶に大切なのは、のみごろである。…つまり、美味しいものを食べるためには、すべて、ころあいこそが大事」下町育ちの著者は、日々の暮らしを心豊かにしたいと願い、質素で昔ながらの生活の知恵を大切にし、一日一日を丁寧に生きた。高齢化が進むなかで、古き良き時代の暮らしぶりを描き、失われつつある風習を現代の人たちに伝える好エッセイ集。
目次
献立日記
美容体操
お正月の値打ち
うちのしきたり
一枚の賀状
男女同量
ご時世いろいろ
御御御つけ
一病息災
きものと私〔ほか〕
著者等紹介
沢村貞子[サワムラサダコ]
1908年東京生まれ。女優・エッセイスト。日本女子大学在学中に新築地劇団に入団。治安維持法違反により獄中生活を余儀なくされる。その後、日活太秦現代劇部に入社。女優としての活躍がはじまる。生涯で数多くの映画に出演し人気を呼んだ。エッセイストとしてもその著作は数多く、’77年に刊行した自伝的随筆『私の浅草』は名著として評価が高い。同書で第25回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。’96年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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森の三時
39
Eテレの「365日の献立日記」を見て感銘を受けこちらの本へ。不規則な女優業をしながら家庭では食事を作りこまごまとした家事もこなし、沢村貞子さんすごいです。明治生まれのお母様に仕込まれた暮らしの知恵や人としての心の持ち方など、良い意味で昭和までの日本人の姿が描かれた素敵なエッセイでした。貧しかった日本にもやがて物が溢れるようになり、家事の機械化が進み、女性の地位も向上していく中で沢村さんの暮らし向きも少しずつ変わっていくのだけれど、頑固さと柔軟性の両面を兼ね備え、何より背筋の伸びたおばあちゃまでした2023/07/27
井上裕紀男
39
一日一度陽の当たる「ひなたの雑草」。自らをそう表現しているが、沢村氏の洒落っ気のあるちょっと皮肉めいた語り口が心地良い一冊。一気に昭和の世界へ入り込んでしまいます。 御御御付けって書くと、味噌汁も確かにしゃんとした料理なんだと改めて思い、鰹節のエピソード「けずる」は戦争に苦しんだ彼女の思いが詰まっていて惹かれます。 ほどほどのしあわせや一病息災など、台所だけじゃない話も実に染み入る。時々見せる芝居へのこだわりと捉われない抜け感が名女優と謳われた所以でしょうか。 人生は「ころあい」が大切なのでこの辺で。 2021/09/19
しのさー
20
「中掃除小掃除」5月土曜、下町で町内中で助け合い大掃除(衛生掃除)区役所から済判の紙をもらい玄関先に貼る習慣はお祭りのようで面白かった ほかに「食いしんぼ」「ドラマの中の姑」「苦労を食べてしまった人」も印象に残った 沢村さんが手間ひまをかけ、季節に応じた料理は美味しそうで想像しながら読んだ 自分で作るのは好きではないが、料理の様子を読むのはとても楽しい2022/09/18
かおりんご
20
この本も何で読もうと思ったのか分からないけれど、面白いエッセイでした。生活を丁寧にして過ごそうという気になりました。沢村さんの作る料理がすごくおいしそう!まねをして作ってみます。2014/01/14
あきまこ
19
図書館から借りた、古い単行本の方で読了しました。明治生まれのおばあさまの、明るさと清々しさ、軽やかさが余韻となる生活指南書でした。関東大震災や戦争を体験されてきたということを、愚痴っぽくならず、教訓めいたことを匂わすでもなく、さらりと書いてあるところがこのエッセイの良さだと思います。古いおばあちゃんの知恵なのかと思ったら、それほど時代がかっているわけでもなく、見習いたくなること多かったです。特に、家事を面倒だと思う気持ちを反転させるコツみたいなものは、すぐに実践したいし、時代を越えて共感いたしました。2016/09/09