内容説明
私のこれまでの五十年を通じて、一番印象に残っているのは、敗戦前後の飢餓時代に、たまに口にすることのできた銀シャリだった(「あとがき」より)。そう書く著者が喰べ物について心がけている唯一のことは、米とか、味噌とか、豆腐とか、日常茶飯の物をこそ吟味すること。豪快無比な人生を味わい深く彩る食の数々。口腹の悦びに満ちた名エッセイ集。
目次
練馬の冷やしワンタン
駄喰い三昧
おうい卵やあい
ソバはウドン粉に限る
江戸前の落ちこぼれ もんじゃと豆かん
右頬に豆を含んで
大喰いでなければ
花の大阪空腹記
紙のようなカレーの夢
及ばざるは過ぎたるが如し
ギュウニュウたこかいな
朝は朝食 夜も朝食
キョーキが乱舞するとき
あつあつのできたて姐ちゃん
フライ屋風来坊
甘くない恋人たち
向う横丁のたばこ屋の
酒は涙か
大物喰らい
徹夜交歓
肉がなけりゃ
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929年東京生まれ。雑誌編集者などを経て文筆活動に入る。’61年「黒い布」で中央公論新人賞、’78年『離婚』で直木賞、’89年『狂人日記』で読売文学賞を受賞。また阿佐田哲也名義で『麻雀放浪記』等のギャンブル小説を多数発表。’89年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
怜
31
あーー。早く時期が来て焼きそら豆食べたいわ!そして、やっぱり梅むらの豆かん!!2015/02/19
Tomomi Yazaki
26
色川武大、またの名は阿佐田哲也。言わずと知れた、雀士です。彼は睡眠発作症を患っていて、歩きながらでも眠りに陥ってしまうとのこと。そんな彼の楽しみは食べること。朝、起きる前から食べたくて食べたくて食べ物に発情して二度寝もできない。好物はご飯。体に悪いからやめようと決心するが、親戚や知人からご飯の友が次々と送られてきてやめるにやめれない。でも読んでみると、ご飯に限らず、たまご、蕎麦、親子丼などなんでもござれの、ただの食いしん坊でした。もう鬼籍に入ってますが、あの世で喰うに困らず楽しくやってるんでしょうね。2020/07/31
こすも
17
佐藤正午さんのエッセイで『友は野末に』が紹介されていて、いつか読みたいと思っていた色川武大さんを初読み。昭和40年代、牌の並びを絵柄で記載する麻雀小説を発明し、『麻雀放浪記』で日本に麻雀ブームを起こした阿佐田哲也としての方が有名かもしれません。そんな色川さんの食べ物のエッセイ。今まで読んだ中で一番の食いしん坊です。庶民的な食べ物をがんがん食べ続ける様は圧巻。色川さんの生きざまをみるようです。やっつけで書いたと言う文章は、言葉の選択がシャープで、色川さんのナイーブな部分が滲み出ており、とても味わい深いです。2019/01/24
駄目男
16
ご存知かと思うが、色川武大には今一つ、『麻雀放浪記』でヒットした阿佐田哲也というペンネームがある。朝だ徹夜という意味で、彼は博徒として鳴らし、また、映画、芸能、ジャズと幅広いジャンルに精通していた。そんな彼は食道楽の作家がよく書く、喰いたい放題となるわけだが、高級料理が趣味という訳ではなく、とにかく雑多な物を食べ、エッセーにしている訳だが、特別、食い意地が張っているわけでもない私としては、この手の本を読んでも触感が動くというわけでもなく、そうか、色川武大はそんな生活をしていたのかぐらいな印象しかない。2021/12/18
mawaji
9
たぶん初色川武大。旅行の時に読む用に買っておいた一冊。著者は勝手に食通というか美食家のイメージを持っていましたが、ふりかけ、ご飯、卵、うどん粉など日常茶飯の物に対する慈愛に満ちたユーモアあふれるエッセイでした。今の私と同年代の頃に書かれたもののようで、「本屋と文房具屋は必ずのぞく」「めまぐるしく近代風に変わってきたプロセスを眺めることができた貴重な世代」「年齢で、食べる峠を越した」などふむふむ頷きながら読みました。著者に対する愛情溢れる長嶋有の解説を読むと麻雀放浪記も読まなければなるまい。麻雀しないけど。2019/02/24