内容説明
二年前に大学を退官した木島が美奈子に再会したのは、イタリア・ミラノ郊外の修道院でだった。初めて一夜を共にした翌朝、美奈子は風のように消えてしまった。「神さまに感謝しなくっちゃ」。彼女の口癖の苦い意味を後に知った木島の胸に、愛しさがこみ上げる（『風のかたみ』）。懐かしい風景、昔日の心の傷―せつない人間模様を描く八つの作品を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
38
中年から初老の主人公の、家族や幼馴染と様々な昔の思い出が著者らしい癖のない文体で描かれている8編の短編集。この年頃になると誰にも同じような心の動きはあるものだとしみじみしてきました。短編なのでさらっと読み切ってしまいますが、内海さんの作風が好みなようだと気付くくらい読後感が良かったです。2017/06/20
衛兵
8
かつて芥川賞、直木賞にもノミネートされた岩手の作家、内海隆一郎の短編集。本作は比較的アダルト向けというか、年配の方向けの8編。日常にひそむ人の心のうつろいや機微、それらを易しい言葉でさらりと表現できるのは流石。もっと評価されていいと思うんだが。2016/08/17
