内容説明
朗読のよろこび、東北にささげる言葉の花束。31人の書き手による詩と短編のアンソロジー。
目次
ろうそくがともされた(谷川俊太郎)
赦されるために(古川日出男)
片方の靴(新井高子)
ヨウカイだもの(中村和恵)
ワタナベさん(中村和恵)
わたしを読んでください。(関口涼子)
白い闇のほうへ(岬多可子)
今回の震災に記憶の地層を揺さぶられて(細見和之)
祈りの夜(山崎佳代子)
帰りたい理由(鄭暎惠)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
107
帯には「東北にささげる言葉の花束」とある。ろうそくの灯りに揺らめく言葉は、けれども花束とは程遠いと思っていた。人が心に詩を失ったとき、それでも詩人は詩をしぼり出す。灯りの周りの拭えぬ闇。絶望へいざなう圧倒的な虚無。詩人として、人として、誇りをかけて紡いだ言葉の束。灯りの揺れを瞳が追う、生きているという証。灯される暖かさ。ああ、そうか。だから花束なのか。2018/03/04
森の三時
23
この本は、東日本大震災の後、「人間のひとりひとりはあまりにも弱いので、私たちは感情をも言葉にして分かち合い、そこから力を汲み上げる工夫をしなくてはなりません。その作業に直接役に立つ本を作ろう。例えば、しずかな夜にろうそくの炎を囲んで、肉声で読まれる言葉をみんなで体験するための本を。」(編者あとがき)という企画からうまれたものです。その呼び掛けに応えた31人の作品群。この本の中からいろいろな言葉が押し寄せてくる。真正面から感情を受け止めようとすると、今の私では漂流しそうになり、全てを読むことができなかった。2017/01/03
空崎紅茶美術館
7
言葉で人を救うことはできないかもしれない。空腹が満たされるわけでもない、圧倒的な絶望の中では何の役にも立たない。けど、それだけで救いたいと思う。救われたいと思う。誰かのこころに響くことを願われた言葉たち。蝋燭の炎は弱く、照らせないものの方が多い。一寸先は闇だ。しかし、人がそれを覗くとき、決して闇を見ているわけではない。その向こうの何か、自分の存在よりも大きなものを見ている。2011/10/11
ひろみ
6
なにもできないけれど、なんでもできる。川が川に戻る最初の日。その光景を思い描きながら、言葉もそんなふうに溢れて流れて届くものだと思った。2016/07/27
niaruni
5
この本に関連する朗読会に足を運んだ。当事者でもないのに、不覚にも涙があふれた。詩のことばはことばとして発声されたときに、文字とはまた別の、強烈な力を持つのだということをわが身を通じて体感した。詩は力だ。2012/05/02