福祉国家における政治理論

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  • サイズ A5判/ページ数 183,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784326653256
  • NDC分類 364
  • Cコード C3036

出版社内容情報

補償は補償を求める。福祉国家ははたして自らが作り出してしまう現実に対応できるのだろうか。扶助でも補償でもない問題設定と分析。

社会のありとあらゆる作動には、権力が浸透していると見なされるなら、ことさら「政治」について語る意味はどこにあるというのだろうか。福祉国家は、自由を保障するものなのか、自由を抑圧するものなのか。二項対立の不毛を乗り越えて、いまなお可能な「反省」する福祉国家を問う。複数政党制に支えられた政治システムがはたす役割。

[関連書] 長岡克行 『ルーマン/社会の理論の革命』 (勁草書房刊)


第1章 福祉国家の目標と現実
第2章 時代遅れの理論
第3章 社会理論上の基礎
第4章 福祉国家:政治的包摂
第5章 自己言及システムとしての政治
第6章 ヒエラルキーと循環
第7章 自己観察
第8章 環境との関係
第9章 不安定性と変動
第10章 経済、教育、科学からの三つの事例
第11章 機能と作用
第12章 政治理論の政治概念についての中間考察
第13章 法と貨幣:福祉国家の作用手段
第14章 官僚制
第15章 行政政策の合理化:組織、プログラム、人員
第16章 政治的オプション
第17章 政治責任と政治理論
第18章 実践に向けて
第19章 要約

訳者解説/年表・ドイツの社会保障と政権/索引  

内容説明

福祉国家は、どこまで国民を包摂しうるか、また包摂すべきか。とどまるところを知らないさまざまな要求、補償が生み出す新たな補償の必要、環境問題の深刻化…進歩的/保守的、左派/右派という二項対立が無効になったいまこそ求められている、社会システム理論の思考。

目次

福祉国家の目標と現実
時代遅れの理論
社会理論上の基礎
福祉国家:政治的包摂
自己言及システムとしての政治
ヒエラルキーと循環
自己観察
環境との関係
不安定性と変動
経済、教育、科学からの三つの事例
機能と作用
政治理論の政治概念についての中間考察
法と貨幣:福祉国家の作用手段
官僚制
行政政策の合理化:組織、プログラム、人員
政治的オプション
政治責任と政治理論
実践に向けて
要約

著者等紹介

ルーマン,ニクラス[ルーマン,ニクラス][Luhmann,Niklas]
1927年12月8日ドイツ・ニーダーザクセン州リューネブルクで醸造業を営む家に生まれる。第二次世界大戦中は空軍補助員となり、アメリカ軍の捕虜になって終戦を迎える。1946~1949年にフライブルク大学で法学を修める。その後1962年までリューネブルクで行政官として働く。1960~1961年に研修奨学金を得てアメリカ・ハーバード大学に留学し、アメリカ社会学における社会システム理論の泰斗タルコット・パーソンズのもとで研究を行う。帰国後に行政官の職を辞し、1962~1965年にシュパイヤー行政大学の研究所研究員、1965~1968年にミュンスター大学の社会研究センター局長(ドイツ社会学におけるミュンスター学派の泰斗ヘルムート・シェルスキーの招聘による)を務め、そのかたわら1966年にミュンスター大学で社会科学博士号と大学教授資格を取得する。1968年にシェルスキーらが中心となって新設されたビーレフェルト大学の社会学部教授となり、1993年まで在職して名誉教授となる。その間1968~1969年にフランクフルト大学でテオドール・アドルノの講座代行を務め、1971年にフランクフルト学派のユルゲン・ハーバーマスとの間でいわゆるハーバーマス=ルーマン論争を行う。また1989年にヘーゲル賞、1997年にアマルフィ賞を受賞している。1968~1977年はビーレフェルト市内に居住するが、妻を亡くした後、ビーレフェルト近郊のエーリングハウゼンに居を移す。1998年11月6日エーリングハウゼンで死去。ドイツ社会学における社会システム理論の代表者であり、その研究領域は、社会システムの一般理論、各機能システムの理論(法、政治、経済、科学、宗教、教育、芸術、マスメディアなど)、意味論(ゼマンティーク)、組織論など多岐にわたり、著書約70冊、論文約400本が公刊されている

徳安彰[トクヤスアキラ]
1956年佐賀県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。法政大学社会学部教授。専門は社会システム理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ぷほは

5
再再読。当時の西欧事情の基礎的な背景とは別に、民主党政権の政治主導から現在に至るまでの安倍政権の動きを想起しながら読むと、合点が行く箇所と当時の西欧特有の事情によるものとの具体的な区別がついてくる。政治/行政/公衆の逆循環による政治システムの自己への過大要求が福祉国家であり、公衆の世論による要求→行政の対応とプログラム制定→政治のオプション選択→公衆のさらなる要求という流れから再現なく増大していく取り組みが、進歩/保守という従来区別に代わる拡張/限定という区別を生む。機能分化の手つきが板についてきている。2018/09/15

ぷほは

4
再々再読。当時(1981)のポーランドとイギリスを併置しているのがすごい(165頁)。イギリスはこの6年後サッチャーがthere is no such thing as societyと発し、ポーランドは後の大統領レフ・ワレサによる自主管理労働組合が誕生していた。その後ポスト社会主義の中で準大統領制によってコントロールを図るもポピュリズムの動向とEUとの対立が激化。イギリスは2020年になってジョンソン首相がthere really is such a thing as societyと話す。さて日独は?2022/01/21

ぷほは

4
再読。やはりコンパクトであることと理論の明快さは確かにあるのだが、その分展開が追いやすいとは言い難い。敢えて言えば、ジンメルのエッセイに近い。おもしろい言い回しや非常に優れた発想の宝庫であり、またその背後に強力な理論的バックボーンがあることは分かるが、前者に関してはややアドホックであること、後者についてはOPS理論以前でありながらその直前でもあるという過渡期であるために、この著作単体でその全体像意識することが難しい。個人的には最近読書をサボっていた影響がモロに出ていて、最後らへんは議論が追いきれなかった。2016/07/30

ひばりん

1
社会学の理論的大家ニクラス・ルーマンは、極めて幅広いテーマを扱って縦横無尽に理論と脚注を巡らせたが、個人的に一冊オススメするなら、本書。みずから官僚キャリアを歩んだルーマンらしい政治論が展開される。政治を「政治・行政・公衆」の三要素に分節し、その正循環と逆循環を論じた箇所は、きわめて現実に即した分かりやすい整理と思われる。(正循環:公衆が投票し、政治家が立法し、国家官僚制が法を執行する/逆循環:公衆が官僚制に対してロビイングし、官僚が政治家を誘導し、政治家が公衆に向けて政治的オプション選択を行う)

ぷほは

0
ルーマンの著作の中でも最もコンパクトに読める部類。ハーバーマス『公共性の構造転換』と時代背景・問題関心ともに好対照をなすため、併読すると様々に興味深い論点が出てくる。上下の二項図式から政治・行政・公衆の三項図式への変容という議論は、それ自体図式的ではあるが、そこから具体的な個別理論へと目配せを効かせていく手腕はさすが。またジャック・ヤング『排除型社会』と比較すると、配分の問題を論じていても承認の問題を全く気にしていないルーマンの視覚の特異性が開けてくる。政治プログラムにおける人物への着目はあっても。2016/04/08

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