出版社内容情報
心は主体だろうか?ギブソンの存在論に依拠しながら、心の個体主義・中央参謀本部理論・心身分離の前提を覆す新しい主体概念を示す。
従来の認知科学や心の哲学では、「心」は行為者の内部で生じる過程であり、そこから身体に指令を出す中央参謀本部のようなものとして想定されてきた。本書では生態学的哲学の立場から、心が本質的に身体を通じて環境に開かれていることを論じ、心=主体の概念の刷新を目指す。
関連書:同著者 『エコロジカルな心の哲学』(小社刊)
序章 淡い主体と鮮やかな主体
1 “自閉症”ドナ・ウィリアムズ
2 デカルトの「心」
3 淡い主体と鮮やかな主体
4 J・J・ギブソンとエコロジカルな心の哲学
5 本書の目的──心の個体主義に代わる心(=主体)の概念の提出
6 本書の構成
第一章 出来事としての身体
1 デカルト的変換
2 心の肉体性──材質・サイズ・モルフォロジー
3 物理的身体の豊かさ、現象学的身体論の限界
4 出来事としての身体
5 出来事の存在論とテキストの概念
6 主体の死と再生
第二章 他人のいる環境、他者ではなく
1 他者問題とは何か
2 心の理論と自閉症
3 心の理論が前提としていること
4 生物を生物として知覚すること──ギブソンの生物知覚論
5 模倣のアフォーダンスと模擬(シミュレーション)説
6 ゴードンの模擬説、共鳴動作、バイオロジカル・モーション、ミラーシステム
7 他人の根源性と模倣による自己の成立
第三章 環境と心の受動性──対話とテクノロジー
1 相互参照行為としてのコミュニケーション
2 供述の心理学
3 バフチン──応信性と腹話性
4 媒介された行為、技術的ツール、心理的ツール
5 心の哲学とテクノロジーの政治哲学
第四章 動物による人間の心の形成
1 心理学における動物と人間の関係性
2 デカルトと動物実験
3 人間の言葉を憶えよ
4 動物になること──自閉症者グランディンと動物のコミュニケーション
5 コウモリであることを理解する
6 伴侶動物と野生動物──自然=人間との接し方
第五章 心は主体だろうか──自由と意図について
1 決定論と自由
2 選択と無根拠性
3 自由とは比較概念である
4 自由の自己原因説と情報説
5 自由は自分を教育することにある
6 形相因としての意図
7 どういう意味において、私たちの存在は世界に必要なのか
注
参考文献
事項索引
人名索引
目次
序章 淡い主体と鮮やかな主体
第1章 出来事としての身体
第2章 他人のいる環境、他者ではなく
第3章 環境と心の受動性―対話とテクノロジー
第4章 動物による人間の心の形成
第5章 心は主体だろうか―自由と意図について
著者等紹介
河野哲也[コウノテツヤ]
1963年東京都に生まれる。1995年慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程(哲学専攻)修了。玉川大学文学部助教授、博士(哲学)
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