出版社内容情報
主として人類学の成果に依拠しながら,暴力現象の多様な広がりをおさえ,「第三項排除論」と呼ぶ理論的枠組の提起により日々生起する社会形成の原点へと考察の垂鉛を下す。
平和とは別の手段をもってする戦争の継続である―社会形成の始源に、人と人との交わりのただ中に働く暴力の根源性を抉る。
目次
第1章 戦争状態論
はじめに
自然と文化
戦争状態について
第2章 神話と暴力
『アスディワル武勲詩』をめぐって
交換と戦争
連続と不連続―コスモス創成暴力―
第3章 貨幣と暴力
商品形態と資本制生産様式
商品形態=価値形態の形式的構造
商品・貨幣と暴力
第三項問題と主人・奴隷関係
第三項排除の二重性
補論 記号としての貨幣
第4章 自己意識―主と奴―
ヘーゲルにおける暴力
ルソー・スミス・ヘーゲル
欲望、労働、戦争状態
承認を求める闘争
『現象学』「(B)自己意識」篇について
「自己意識」という地獄
第三者(媒介者)の形成
アウフヘーベンとアウスシャルテン
第5章 未開の権力
社会形成に内在する暴力とその排除
未開社会における首長制の特質
排除された第三項としての首長制
国家発生の危機と<ジャングルの予言者>
小括
第6章 呪われた部分―バタイユ論―
はしがき
『呪われた部分』の実践的意図
限定経済論から普遍経済論へ
普遍経済の原理
宗教の理論
補論 身体と暴力
第7章 暴力の社会存在論へ向けて
社会形成と暴力
「第三項排除」現象
あとがき
初出一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
12
AとBが交換可能になるとき、交換不可能なそれ以外のものは「排除」をされる。社会に内在する「排除の構造」=暴力の発生過程を、「未開社会」と現代社会を往還しながら考察する。クラストルの「権力を持たない首長」やバタイユの「エコノミー論」を補助線に、交換・贈与・犠牲の諸相を見た上で、さらには貨幣経済が成立する謎にも迫る。貨幣がはらむ供犠のメカニズム、がやや掴みにくいのだが、社会哲学と文化人類学を結ばんとする強い意志を感じる。社会が、共同体が、構造として暴力を内在していることの自覚を促す。それにどう抗うかが問題だ。2015/03/11
Mealla0v0
1
社会の形成過程において、暴力は重要な機能を果たしている。同質化された空間を形成する暴力は、しかしながら、その後において消失する――正確には、暴力は不可視化される。つまり、暴力は社会を形成しながらそれ自体が排除されるということ。このことを考えなくてはならない。2019/04/08
cijimachang
0
コミュニケーションの存在条件、それが第三項排除である・本書は、暴力の問題をこの第三項排除の視角からの再検討するための導入書であり、その長期的課題に取り組んだはじめてのものだと思われる。社会哲学的な理論構築の欠如が指摘されており、その空白を埋めようとしている。2022/09/13