内容説明
遺伝子操作、脳死・臓器移植、生殖補助技術、終末期医療―。医療科学の新時代の到来を受けて1970年代初頭にアメリカで成立した生命倫理学。草創期から第一線で活躍した著者が、その成り立ちと社会的な意義を描き出した臨場感溢れる成立史。
目次
1 生命倫理学の始まり―人と場所(良心にかかわる大問題―生命倫理学以前の医療倫理;神学者―伝統の再発見;哲学者―概念の明晰化;「委員会」時代の生命倫理学―生命倫理学における政府の役割一九七四年~一九八三年)
2 生命倫理学の始まり―様々な問題(危険な実験―人を被験者とした研究の倫理;生命のつぎはぎ―遺伝学と倫理;現代医学の驚異―臓器移植と人工臓器の倫理;誰が生き残り、誰が死ぬか?―死と死に行くことの倫理;素晴らしき新世界―人間の生殖の倫理)
3 学問、対話、そして精神風土(学問としての生命倫理学;対話としての生命倫理学;生命倫理学―米国とその他の国々で)
著者等紹介
ジョンセン,アルバート・R.[ジョンセン,アルバートR.] [Jonsen,Albert R.]
1931年サンフランシスコ生まれ。1967年エール大学にて神学の博士号を取得。生命倫理学に転向し、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などを経て、ワシントン大学名誉教授
細見博志[ホソミヒロシ]
1949年生まれ。1976年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。金沢大学医薬保健学域保健学系教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
1
生命倫理学の中身ではなく、それに携わった人たちの本。携わった人の中には、伝統の再発見をした神学者や、概念を明晰化した哲学者などもいるし、それらが委員会となって提言をしていた。あとは、遺伝子操作や臓器移、植生殖倫理など様々な問題について述べられていた。生命倫理学の中身を説明するのではなく、それを作った人、それの誕生にかかわった人たちにフィーチャーされていて面白かった。2023/10/19
たろーたん
0
安楽死等の事件により、生命の尊厳を第一命題とする医療倫理が動乱し、生命倫理学の必要性が生まれた。その生命倫理学は神学と哲学から多くを吸収した。神学からは、宗教色を払拭した人格の尊厳、選択の責任、ある種の超越的価値に照らして人間の行為の正・不正を見定めること、これらの価値を現代に翻訳しようとする感心等を取り込んだ。また哲学からは、義務論と結果主義という二つの規範的理論からなる分類法と伝統的な契約理論の現代的見解、論理的な方法論などを取り込んだ。生命倫理学は、これらを取り込んで今の形へと至ったのである。 2018/05/05