出版社内容情報
成長し,新陳代謝する〈動く都市〉の空間設計のための組織化の方法を提起する本書は,住宅と道路,建築と自然,住む空間と働く空間といった,都市の機能のある断面(原型)をとり出して構造づける原型設計から出発して,類型設計,造型設計へと三つの段階を辿る都市デザインの方法をはじめ,著者独自の都市空間論を展開する。
★黒川紀章さん「私にとっての紀伊國屋書店新書」(「i feel」出版部50周年記念号より)★
「私が紀伊國屋新書の一冊として頼まれ、『都市デザイン』を執筆したのは一九六四年後半から一九六五年初頭にかけてであった。この期間中、フルシチョフの失脚、所得倍増計画の池田内閣に代って佐藤内閣の登場と変化の激しい年であった。何かが変るぞという予感をひしひしと感じていた。
当時は東大大学院博士課程の学生として丹下健三研究室に籍を置く身分であったが、実際の建築を建てる仕事はなかったものの、国際会議への出席だの、論文を書いたり、雑誌の取材を受けたりと、貧乏だが、忙しい毎日を送っていた。でも、忙しいから二ヵ月で一気に書いてしまおうと決意し、原宿の交差点のところを少し入った平屋の一軒家を借りてこもり、ほかの一切をシャッタウトして、予定通りの二ヵ月でこの原稿を書き上げたことを覚えている。
その頃デザインといえばファッションデザインのことであり、建築設計、都市計画という表現以外にはまったくデザインという言葉を使わなかった時代である。全く新しい視点から都市を論じてみたいと考えていたので、あえて「都市デザイン」という新しい言葉のタイトルを選んだことが効果があったのか、日本国内での反響は大きく、また後に、海外の韓国、中国、ソ連でひそかに海賊版が半ば教科書のように流通していることを人づてで知った。
本書の中の、「東洋の都市には広場がない、西洋の都市には道がない」という東・西の広場と路(歩道)の比較文化論を展開した文章が、「高校国語教科書 現代文」に志賀直哉の文章とともに使われたときにはとても驚いた。この東西都市空間比較論の部分だけが海外の「エキスティックス」という都市計画で有名な雑誌に掲載され、国際的な論議も呼んだ。その後こうした論点をまとめて『道の建築――中間領域へ』を丸善から出版している。
生態学、とりわけ都市におけるウォーターフロント・河川の重要性を説き、河川や海岸の埋立てに反対した。また、公害は、産業公害だけではなく生活そのものからのゴミなどによる公害がいずれ深刻になると警告をしている点を、「赤旗」からは批判された。企業のつくり出す公害から目をそらす意図があるというのが、その批判の論点だったと記憶している。
また、情報化社会の到来を予言し、都市を情報の流れとして捉え、情報交換のための情報空間の重要性を説いている点も先見的だったと自負している。
この新書の復刻版が出版されたので、四十年後の現在でも献本することが多いが、だれもが四十年前の拙著を新刊本だと思って読んでいただいており、いまだに好評なのが、私にとってはとても嬉しい。」
感想・レビュー
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ちぃ
浅香山三郎
Auristela