出版社内容情報
アメリカ南部を舞台に、巨大な荘園を建設し自らの家系を築きあげる男の、南北戦争を挟んで展開される繁栄と没落の物語。重層的な語りの中に呪われた血の歴史が浮かびあがる壮大なサーガ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
167
世界文学全集完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11684481?sort=book_count&order=desc 第九巻は、ノーベル賞作家フォークナーの南北戦争時代のドメスティックな骨太の人間ドラマでした。続いて第十巻へ。 https://www.kawade.co.jp/np/special/3677774465/2021/04/08
藤月はな(灯れ松明の火)
48
三重の語りによって浮かび上がる、南部を支配した成り上がり、トマス・サトペン一家のあまりにも苛烈過ぎた歴史。『犬神家の一族』の犬神左衛門のようにもう、亡くなった人物なのに時に憎悪と軽蔑を込めて、時に客観的に語られるトマス・サトペンの存在感はとても強烈だ。黒人を搾取し、原住民を騙して土地を奪い、南北戦争で価値観が逆転しても閉じ篭り、染み付く南部アメリカの血縁への執着と土地に対する呪縛は、関係もなかった筈の生者の魂すら、蝕んで破滅に追いやる。なんて呪うような語りの饒舌さに恐ろしさと戦慄を覚える作品なんだろう。2017/05/08
のりすけたろう
22
初ウィリアム・フォークナー!なかなか濃厚な文章と内容でたっぷり楽しめました。やっぱり長編が好きです(´∀`*)✨どっぷりヨクナパトーファの世界に浸りました。このシリーズ?サーガ?は、かなり細かく設定されているみたいで他の作品も楽しみになりました。2020/11/09
loanmeadime
21
全てを知る作者が順に出来事を語るという普通の物語形式ではなく、全部を全部知っているわけではない、コンプソン親子やミス・ローズといったジェファーソン所縁の人が、自分の知っていることを時をおいて話す、という形式で話が進められます。そのため、読み始めは話に入っていきにくく、寝落ちを繰り返したりしましたが、中盤に至って、お仕着せとは言え自分より良い身なりの黒人に裏へ回れ、と言われたことから成り上がることを誓ったトマス・サトペンとその子供たちの物語の流れに乗れました。ヨクナパトーファ・サーガの広大な世界をどうしよう2023/02/06
ひじき
17
再々読。課題のレスポンスを書くためなので、前回のメモを見ながら流し読み。ストーリーはサトペンというとうに亡くなっている男の話なのだけれど、生前の彼を知る二人の人物が大学生のクェンテンに彼の思い出を語る(舞台は南部)。クェンティンはそこに自分なりの解釈を加えながらルームメイトに話して聞かせる。そして彼らはサトペンおよび南部の異常性について話し合う(舞台は北部)。という大変複雑な構造で、しかも「思い出」と「語り」がメインなので食い違いや感情的偏見も多く把握しにくい。でもサトペン意外といい奴なのかも、と書いた。2014/11/01