内容説明
人生のいくつかの場面で、私を支えてくれた、書物というかけがえのない友人たち。「遠い朝の本たち」―幼年期からの読書体験をたどり、自己形成の原風景を描く。「本に読まれて」―当代無比の読書家であった著者の書評を集大成。「書評・映画評」―書物や映画にまつわるエッセイ33篇。
目次
遠い朝の本たち(しげちゃんの昇天;父ゆずり;ベッドの中のベストセラー ほか)
本に読まれて(書評から;好きな本たち;読書日記)
書評・映画評ほか(作品のなかの「ものがたり」と「小説」 谷崎潤一郎『細雪』;『インド夜想曲』と分身 複数の国語を往来する作家の苦痛と不安;3つの地球的感性の交錯 ほか)
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929‐98年。兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。上智大学比較文化学部教授。1991年、『ミラノ霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
77
全集読破中。今回で約半分を読破した。いやー面白い。読んでいてこんなに勉強になるのは全集なのかなって感じた。今回の4巻は書評と映画評になっている。一言で例えるとお洒落な雑貨のセレクトショップであろう。須賀敦子さんが選んだ本一つ一つが絶妙である。アントニオ・タブッキ 谷崎潤一郎ほか中井久夫などそうそうたるメンツが紹介されている。そして書評を読むだけで読みたくなる衝動がでてしまう。またじかんが経ったら読み返して読みたい本を見つけたいと思う。次に読む本が中井久夫なのですこし運命的なものを感じた!2023/05/25
おにく
32
全集第4巻は、エッセイ"遠い朝の本たち"を収録。戦中~戦後の女学校時代から、結婚以外で女性が誇りを持って生きる道はないのか思い悩んでいた文学少女が、イタリア留学を経て、やがて翻訳家としての道を志すという、自身の半生を回想しています。エッセイの中で「父に教えられたのは、文章を書いて人にどう言われるかではなく、文章というものは、きちんと書くべきものだから、そのように勉強しなければいけない。」と。須賀さん文章は、子供の頃から身についたテーブルマナーのようで、後半の書評や映画評で、そうした文章を堪能できます。 2021/07/13
kana
24
耳を当てるとかすかに鼓動がきこえてきそうなほどに、命の宿った優しい文章。さりげないフレーズやエピソードがいとおしくて、不意に泣きそうになる自分に驚く。本と過ごした思い出、本に支えられる日々を綴った「遠い朝の本たち」と書評を集めた「本に読まれて」を収録した全集第4巻。河出文庫、いい仕事してます!特に「婦人公論」連載のブックレビューにて紹介する本はどれもこれも読みたくなって大変です。買った当初は難しく退屈に思えたのが嘘みたいに、宝物の1冊になりました。本好きな人は必読です。2011/03/08
かもめ通信
22
単行本として出版されている「遠い朝の本たち」と「本に読まれて」の他に書物や映画にまつわるエッセイ33篇が収録されているあいかわらずお得で贅沢な1冊。2017/08/17
かりあ
18
じっくり時間をかけた。急いて読むのが惜しい。ことばの一カ所一カ所に、これを読み逃したら絶対後悔するかもしれない雰囲気が漂っていて、割と適当に読み流す癖がある私なのに、我ながら驚くほど丁寧に字を追っていった。堅く、ぴしっとした本は、1日過ぎるごとに紙が手垢によって柔らかく馴染んでいった。本読むとは、本と仲良くなることなのだ。そんなことに気付かされたのも、やはり須賀敦子さんの影響だと思う。2010/05/29