出版社内容情報
最愛の人と死別した悲しみ、苦しみを抱えて「遺族外来」を訪れた患者さんがやがて新しい世界に適応していく姿を描いた医師の記録。
内容説明
愛する人の死にうちひしがれた人を診察する遺族外来で患者さんが教えてくれた、新しい世界に適応しながら生きていく力。
目次
1 死別(父との死別;なぜ、遺族のケアが必要なのか)
2 死別に伴う心と身体、そして社会的な問題(特急電車;大往生 ほか)
3 遺族とのかかわり(「聴く」ことの大切さ;悩まなくてよい ほか)
4 新しい生活への適応(天国への宅急便;天国への留学中 ほか)
著者等紹介
大西秀樹[オオニシヒデキ]
1986年、横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学医学部精神科講師、神奈川県立がんセンター精神科部長を経て、埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授。がん患者と家族の精神的なケアを専門とする、精神腫瘍医(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともち
24
日経新聞で知った。「精神科」とか「カウンセリング」などの言葉は少し抵抗があるかもしれないが、目に見えない心の状態を把握するには専門家の助けが重要になると思う。大切な人を亡くした悲しみは第三者には分かりたくてもわからないもの。ただ「聴くこと」から始めよう。しかし、こちらの「聴く力」がなければいけないだろう。まずは「頑張って」「元気?」「落ち着いた?」などの言ってはいけない言葉を言わないようにしよう。2017/12/20
けぴ
22
言ってはいけない言葉。「がんばってね」、「あなたがしっかりしないとだめ」、「元気?」、「落ち着いた?」、「気持ちの整理はつきましたか」、「あなたより大変な人はいるのよ」。何より良くないのは、「あなたの気持ちは分かります」。これらは慰めの言葉のようでありながら、死別で傷ついた人をさらに傷つけてしまいます。遺族外来の筆者はこんな遺族に出来ることは話を聞いて寄り添うことと説きます。いつかはみんな経験すること。死別について知識と経験を積むことで心ない言葉をかけないようにしたい。2018/02/17
ケニオミ
11
亡くなった家族のことを思い、心身に不調を訴える家族。その家族の心身の平安のために設立された遺族外来。その活動を詳らかにしたのが本書です。本書を読んで、愛する人を突然に失うことの喪失感は実際に経験してみなければ分からないことがよく理解できました。不用意な言葉を遺族にかけないよう注意しなければならないことも理解できました。遺族外来は遺族に寄り添うことなんですね。まだ一部の診療施設にしかない遺族外来ですが、周りの人のちょっとした言葉に傷つかないよう、もっともっと普及して欲しいと思いました。2017/11/26
のり
7
遺族外来という診療科があることを初めて知りました。愛する人の死別は人生における最も辛い出来事。愛する人を失っても社会の中で適応できるように援助することが遺族外来の目標。「気持ちはわかります」は言ってはいけない言葉。気持ちはわからないが気持ちに近づくように努力。特別な言葉は必要ない。耳を傾けること、誠実な態度でいること、傍にいること。詮索はしない。子どもを亡くしたお母さん宛の手紙に涙が込み上げました。届いた贈り物をお寺で焼いてもらい、煙が天国へ昇って届くという話が印象的でした。2017/11/16
ねこ
6
大切な人を亡くして心に深い傷を負う遺族が通う遺族外来の医師によって書かれた本。苦しみを経験した遺族が時間をかけて心の器を大きくして前を向いていく様は、同じ苦しみを抱える者として救いになります。そして筆者も指摘する周囲の人の無神経な言葉…例えば「頑張って」とか「落ち着いた?」とか、そんな不用意な言葉が遺族を追い込むということ…それを多くの人に知ってもらう必要があると心から共感します。2017/12/14