「文学」の精神分析

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  • サイズ B6判/ページ数 228p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309019222
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0095

内容説明

今、この作家・小説が面白い!もっとも読み巧者な精神科医による問題作・話題作の臨床精神鑑定。16人へのクリティカル・オマージュ。

目次

「性愛」と「分裂」―宮沢賢治試論
他者としての「妻」―小島信夫『抱擁家族』再読
逆説の同心円―三島由紀夫論
超越性と情動の倫理―石原慎太郎『化石の森』
ヤコブの梯子、ジェイコブの路地―中上健次『十九歳のジェイコブ』
リアルで厳密で、すこし寂しい希望を―村上龍『最後の家族』解説
「精神分析」の呪縛―『狂骨の夢』批判的読解
京極堂との「会話」『狂骨の夢』再論
唯物論的ラブレター―中井久夫の「文体」
言語の谷間の夢の閾―多和田葉子
『残虐記』の二つの謎―桐野夏生を読む
予告篇による二〇世紀―古川日出男
傷つく人形―金原ひとみ
距離と祈り、あるいは世界の多重化に関する覚え書き―米澤穂信
解離、増殖、そして加速せよ―清涼院流水
「キャラ」の戦争
『キャラクターズ』じゃなぜ朝日新聞社を襲うのか―東浩紀と桜坂洋の共作

著者等紹介

斎藤環[サイトウタマキ]
1961年、岩手県生まれ。精神科医。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学。「ひきこもり」研究の第一人者。評論活動は、時事問題から、文学、美術、音楽からマンガ、アニメ、サブカルチャー全般に及ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

38
作者の無意識にこそ作品の良さが潜んでいて、批評はそこをあたかも初めから目の前にあったかのように指摘していく。書き手にとって、また読み手にとって、精神分析は批評のためにあるような方法だと錯覚してしまいます。短い文章のサブタイトルに作者名が書かれていて、作者を批評するのに精神分析の言葉が躊躇なく使われています。作者の無意識を暴き立てるベタな方法では作者から直接、間接の批判や、来ないまでも嫌われるでしょうから、どうやったら作者でなく登場人物のキャラクター性や文体に批評対象を移していくかがこの方法の要でしょう。2022/05/20

たりらりらん

8
割と新しめの作品を扱っているものが多い印象。著者の専門から文学への批評・解説などを集めた一冊。扱う作品によって、解説の文体にも影響があるようで、それぞれおもしろく読んだ。なかなか位置づけが難しい本であるような気はするけれど、独特の切り口は興味深い。三島について、言葉を重ねれば重ねるほど、たどり着けない世界が露呈してしまう、というのはなんだか切ない。2010/12/23

ヘンリー

4
村上龍と京極夏彦。2人とも自作に対する著者の評を読んだようだが、その後とった態度に格段の隔たりがあった。それを曝露しつつ、2人の章をちゃっかり並べているところに、著者の批評家としてのイジワルさがうかがえる。2009/10/07

イキュア

3
複数の作品を通して作家自体を語る批評集。作品を通して、作家自体の根底に通じるものは何かを探ることは、作者と読者の時間や空間を超えた対話なのだろう。一つの作品だけで作者のことをわかったつもりになるのは早計であり、今後も本との向き合い方で意識しておくべきことかと思う。2022/12/08

バグマン

2
宮澤賢治、三島由紀夫、桐野夏生、村上龍、中上健次、清涼院流水、古川日出男や米澤穂信まで、著者の得意分野であるフロイトやラカンの精神分析を用いて分析している。三島由紀夫の文体の「空疎さ」や「ジャンクさ」を指摘している部分は驚く。機能不全の逆説連発の装飾的な文体は、たしかにサブカルチャーとも相性が良さそう。キャラクターの関係性によって物語が推進を得る瞬間があるという桐野夏生「残虐記」なども、ぜひ読みたいと思った。2013/08/05

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