内容説明
突然の酷い腹痛を繰り返す「捨て猫のような眼」をした若者。かつて暴走族・ブラックパンサーのメンバーだった彼は、その粗暴な風貌と振る舞いから周辺の病院からブラックリストに入れられてしまう。多くの医師や看護師はその腹痛自体が嘘で、「仮病」ではないかと訝しんでいた。そんな中、他院から半ば押し付けられるようにして、彼は「私」の外来を訪れる。総合内科医である私は彼の話を聞き、ある一つの仮説を導き出す。エピソード「クロ」ほか、10篇の短編小説が織りなす異色の医学解説書!新鋭の医師が医学のタブーに挑む。
目次
1 クロ
2 こころの歩き方
3 曖昧色の季節
4 蟻の穴
5 Flyer
6 Rockin’ Life
7 思春期の前提
8 透明なモノサシ
9 モンスター
10 太陽の声
著者等紹介
國松淳和[クニマツジュンワ]
医療法人社団永生会南多摩病院総合内科・膠原病内科(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Cambel
34
7月に読了したのですが、記録するのを失念。今日の日付として登録する。本書はいわゆる医学書と小説を混ぜ合わせたような本。実際、医学書を出版する会社から出ている。具体的には「嘘をついて病気のフリをしてる」のを見抜くテクニックではなく、「胸が痛いのに、うまく説明できずお腹が痛いと言ってしまう」とか、症状が教科書通りじゃなくて、診断がつかない患者を医師たちはどうやって救うのか。例えればNHKの『総合診療医ドクターG』を物語的にして医師の心の声やオフの顔も読めるようにした感じ。診断エンターテイメントになっている。2019/08/06
プル
32
フィクションに経験をおり混ぜての内容。全くこの領域に触れることない人でも、読み方の指南を最初にしてくれています。仮病とみられてしまう人たちをどう診ていくか、仮病とされてしまうにはちょっと疑問が残るのにどう落とし所をつけていくか、しょっちゅう来てしまう患者の外来回数が落ち着く方法も一部書かれています。素人でも面白く読ませてもらいました。仮病使って休みたいと思っている貴方には不向きな本です。あ、私だった。でも、面白く読みやすかったです。著者と思われる先生役、ちょいとカッコよすぎませんか(笑)?2019/06/17
Twakiz
30
これはいい意味で「ぶっ飛んだ本」である.誰に届けたい語りなのか?からしてよくわからない.現場での「あるある」な状況(多くの医師は「できれば関わりたくない」と感じるもの)にこのような視点と思考プロセスと振る舞いで対峙できる(フィクションと銘打っているが実情は著者の思考プロセスそのものだろう)方はそうはいない.それをこのような形で言語化できることはさらに離れ業だ.ほかの人が何事もなく切り捨てるものに心が引っかかる「臨床家」の言葉である.章タイトルや一言は「詩人かつ精神科医の友人の作」と聞いてちょっと安心した.2019/07/18
くさてる
21
おお、面白いぞ。ある症状を訴える患者を中心にした短いエピソードとそれを絵解きする解説とエピローグで構成されている連作集。医療従事者向けの内容だと思うので、専門的過ぎて分かりにくいところもあるけれど、それ以上に「病」「診断」「治療」の関係が解かれていく過程がスリリングでとても面白かったです。2021/02/13
teddy11015544
13
みなさんこれは灰色のページの部分は医学書ですので、そのつもりで読まないと難しいですよ。でも勉強になります。人間の認知と体の反応おそるべし。2019/08/09