感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chang_ume
7
原著1953年刊。欧米圏の都市形成に関して歴史的な解説の前半部、原著刊行時の同時代的状況に関する解説・展望が語られる後半部。都市の歴史解説については古代中世そして近代に至る道筋が描かれる一方で、史的唯物論の歴史観を背景としていわば上部構造として都市を理解する視点が特徴だろうか。羅列的な内容で深い学びが得られたかといえば正直心許ないですが、各都市の豊富な図版は今後活用できるかなと思った。本書後半の戦後都市開発は成長主義が信奉された時代の空気が濃厚。ソ連とロンドンの事例紹介は今や史料的な価値が生まれている。2022/08/20
鵐窟庵
7
近代都市計画に対して、伝統的な都市がいかに形成されてきたか、各時代ごとの世界情勢を交えながら都市の歴史を示している。近代以前の複数の時代の都市を通時的視点から分析する前半と、複数の近代以降の各国の都市計画を共時的視点から分析している後半に分かれている。ソ連のリージョナリズムについては初めて見たので興味深かった。OMAが以前からリージョナリズムに注目しており最近ニューヨークMOMAで同テーマの展示中だが、彼の影響源の一つにはロシア構成主義があるので、単に建築のみならず共産圏での都市計画にもルーツが見られる。2020/03/14
takahiroyama3
2
都市と都市計画の歴史を時系列に紹介する一冊。都市は研究対象としてとても複雑であることが分かります。冒頭に様々な定義を紹介し、その中にも矛盾が存在することを指摘します。そして一冊の考究を通じ、筆者は四つの機能が備わっていることに帰結します。すなわち、生活、労働、交通、快適性です。また計画では、スケール横断性(都市全体から個々の住宅)、分野横断性(自然的・社会的・経済的・技術的諸要素)が特徴とまとめています。この整理に至る重みが本書の魅力でしょう。2021/03/21
ほーらん
0
必要に駆られて進化を遂げてきた都市という生態。時には階級社会を、時には封建社会を、時には人口集中を形成させてきた。 理想的な都市モデルが社会情勢によって変化していく中あの手この手で都市を作ってきた都市デザイナー。近代以降は理論も生まれ始めたが結局正解のようなものは見つからずに次のフェイズにいってしまう。 資本主義社会においても都市は資本家のものでも無産階級にとっても住処であり利用するところである。そういった板挟みが議論を難しくしているんだろうなとも思った。2021/08/06