内容説明
時の足利将軍に冷遇された冷泉派の歌人ながら武家に信奉されて多くの弟子を集めた正徹。正徹の弟子として歌体を受け継ぎその表現をさらに研ぎ澄ませた心敬。
目次
正徹(めぐる江の流れ洲崎の;水浅き蘆間に巣立つ;ひとりまづ梢を高み ほか)
心敬(深き夜の月に四の緒;朝涼み水の衣の;ふけにけり音せぬ月に ほか)
心敬連歌(一声に見ぬ山深しほととぎす;くもる夜は月に見ゆべき心かな;時雨けり言の葉うかぶ秋の海 ほか)
著者等紹介
伊藤伸江[イトウノブエ]
1962年愛知県生。東京大学大学院修了。博士(文学)。現在、愛知県立大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山がち
1
正徹も興味深い歌人であるが、やはり心敬はそれだけにとどまらず間違いなく好きな歌人として挙げることができるように思った。「朝涼み水の衣の薄氷われにかさぬる木々の下風」のような氷の歌は、心敬自身「ひえさび」といった文学理論を唱えるだけではなく、氷に興味を持っているだけに強く心を惹かれてしまう。連歌師が必ずしも和歌師ではなく、仏道に励みながらも和歌と連歌のどちらも大切にした心敬という存在は、中世和歌史の中でも極めて興味深い存在だ。そして、連歌に対しては否定的な正徹が心敬と一緒に載せられているのは因果だと思った。2013/12/29