内容説明
秀吉の朝鮮攻略である“文禄・慶長の役(日本)/壬辰倭乱(韓国)”は、江戸時代から日清戦争にいたるまで、どのように日本と韓国で語り継がれてきたのか。この戦争の言説の中心となった、軍記・軍書の実態を整理・俯瞰し、史学・思想・絵画・演劇・近代小説といった多様な分野との関連・影響・展開を視野に入れ検討する。現在もなお、日韓関係に影を落とす、秀吉の戦争についての記憶の根拠を発掘していく。
目次
1 東アジア版「正しい」戦争の語り方―「異国征伐」という思想を読み解く
2 戦争の言説はこうして生みだされる 引用とバイアス―中国・韓国の資料をどのように利用したのか
3 「教育」のために改変される軍学・軍談テキスト―宇佐美定祐『朝鮮征伐記』を読む
4 娯楽と教訓として成立する歴史読み物―馬場信意『朝鮮太平記』を読む
5 諜報活動から朝鮮にもたらされた『撃朝鮮論』―情報収集径路の謎
対談 本書のテーマは何か
6 朝鮮で加藤清正言説はどのように享受されたか―済州に漂着した「日本人」世流兜宇須は誰か
7 成熟していく歴史読み物―石田三成は英傑か、悪人か
8 転化していく戦争のイメージ―絵入軍記・絵本読本は何を語るか
9 「復古」と「維新」はどう意味づけられていくか―幕末の武家説話から見える歴史認識
10 重ね合わされていく戦争のイメージ―日清戦争期の歴史小説
著者等紹介
井上泰至[イノウエヤスシ]
1961年、京都市生まれ。上智大学文学部国文学科卒。同大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得満期退学。現在、防衛大学校人間文化学科准教授
金時徳[キムシドク]
1975年、韓国ソウル生まれ。高麗大学日本文学科の学部・大学院(博士課程修了)・非常勤講師を経て、2010年に国文学研究資料館(総合研究大学院大学)で博士号を取得。現在、高麗大学日本研究センターHK研究教授。専門は日本近世文学・日本文献学・戦争史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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