内容説明
「国家が閉じてしまって、国家の自由に軍隊を動かしたりすれば、いつだって平和というものは脅かされる。国家が開かれているとその開かれたところから一般大衆のリコール権というのが政府に届き、それを阻止することができる。」戦争と平和を論じた表題作ほか、「近代文学の宿命」「吉本隆明の日常」等、危機の時代にむけて、知の巨人が提言する。
目次
戦争と平和
近代文学の宿命―横光利一について
付録 吉本隆明の日常―愛と怒りと反逆(川端要壽)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ストロベリー・フィールズ・フォーエバー
3
吉本隆明に興味があって読んでみた。また、別の本も読んでみる。2014/05/08
Nick Carraway
2
93,000人が犠牲になった東京大空襲を体験した著者が語る『戦争と平和』「戦争について突き詰めることは、ある程度はできるわけですけれども、平和というのを万人に通じるような意味あいで突き詰めることは、どういうふうにしてもできない」 「理想の世界の条件というのは... 一つは国軍を持たないということです。もう一つは、...武力を行使しないということです」2011/03/08
bittersweet symphony
1
3章で構成されている小冊子。「戦争と平和」は1995年の母校での講演会の記録。戦争は一般概念として定義できるが平和は定義出来ず個人的な感覚でしかありえない、戦争には善悪はなく否定されるべき、国民投票など直接民主制的な手続きが民主主義国家には必須だが誰もこれを言わないことに危機感がある、という主旨。2011/08/01
ダイキ
1
「吉本は四年生頃から完全に文学少年であり、彼の愛読書――横光利一の『旅愁』、保田與重郎の『戴冠詩人の御一人者』、高村光太郎の詩書など――、古典から、当時の軍国主義的イデオロギーとは関係なく、純日本的思想に感化されたのである。この辺のところは、軍国主義的右翼に見られるが、誤解されやすい。むしろ、少年時代からの性情から反逆心が強く、戦後になって、戦争責任において転向文学者や、組織を嫌うところから左翼陣営の糾弾に当たっているのも、いかにも吉本らしくうなずかされる。」〈吉本隆明の日常/川端要壽〉2018/05/02
中納言
1
戦争は政府に対するリコール権の様な、政府のやることをチェックする機能を国民が持つことが出来れば、防ぐ事が出来る。しかし、平和の感じかたは個々人によって異なるために世界的に実現することは難しい。なるほど、それならば最低でも戦争を起こさないような仕組を作れば最低限戦争で家族をなくすという平和でない状況を作らなくてすむだろう。この講演は今から15年前のものだが、今まさに国民が望んでいるのは、政府へのリコール権という直接民主主義の方法だと思う。2011/02/07