出版社内容情報
「百人斬り競争」名誉棄損裁判に関連して被告側が相継いで発掘した史料を活用しながら、「百人斬り競争」の史実の確定に挑戦し、その歴史的叙述を試みる。
内容説明
「百人斬り競争」を“賞賛”した時代があった。軍人はなぜ日本刀を携行したのか。「百人斬り」は可能か。「百人斬り競争」は創作記事か。文献史料を徹底的に検証し、歴史学の立場から「論争」に終止符を打つ。
目次
「百人斬り競争」を生み出した戦争社会
「百人斬り競争」の傍証―日本刀と軍国美談と国民
「百人斬り競争」の証明
「百人斬り競争」はなぜ南京軍事裁判で裁かれたのか
著者等紹介
笠原十九司[カサハラトクシ]
1944年群馬県生まれ。東京教育大学大学院修士課程中退。現在、都留文科大学教授。専門は、中国近現代史、東アジア近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風見草
6
本書は百人斬り問題の前提としてまず、刀修理師の著作「戦ふ日本刀」や当時の新聞記事から、日本刀が゙活躍゙した事実や日本刀の性能、それが賛美された実態を明らかにします。そして、事務仕事のイメージのある副官も前線に出る事があった事を規定と事実から示し、記者との談話が可能だった等のアリバイを証明して、百人斬り競争を論証していきます。日中戦争では、白兵戦での日本刀の実戦使用とともに、武装解除した捕虜や徴発に反抗した住民の据え物斬りによる処分がしばしば行われ、いかに日本刀が゙活躍゙した時代であったかが分かります。2011/08/10
amabarashi
4
明治以降、儀礼刀としての役割だった日本刀が日中戦争時期に実戦で使われ、日本精神の象徴とされていた事実が興味深かった。本書はそうした日本刀の役割や実戦での使われ方を丹念に考証し、「百人斬り競争」の実態を明らかにする。また中国が「百人斬り競争」をいかに知ったか、南京に入城する過程で行われた2人の少尉の「百人斬り競争」が、中国が司令官級の戦犯裁判が行えなかった戦後の状況により、南京事件の「残虐性」の象徴として「清算」の対象になった歴史的経緯がわかる。2012/02/25
takao
2
ふむ2023/12/24
teitowoaruku
1
日中戦争を象徴する「百人斬り競争」について研究した本。はっきり百人斬り競争が行われていたと確定はできないが、新聞や手記から状況的にその可能性が高いというような内容。2006年の百人斬り裁判についても「まったくの創作とは認められない」とはっきりしないグレーな判決だった。ただ問題なのは、こうした報道が持て囃される国だったこと、残虐行為を誰も不道徳と思っていなかったことだろう。2022/03/13
yasukawayasukawa
1
歴史学・歴史、戦争史などが好きな読書の知的好奇心を最大限満たしてくれる名著だと思います。 作者はこの本の意図するところを敢えて述べてはいませんが、読者に考えを促しているのでしょうよ 科学者としての笠原先生の歴史学への真摯な向き合い方を存分に味わえる名著